会えばまたギンちゃんに迷惑がかかる。会わなければギンちゃんは罰を受けることもなく暮らせる。いや、彼にとってそれが当たり前なのだ。私こそ二度も守ってもらってこれ以上恩を仇で返すわけにはいかない。このままゆっくりギンちゃんを忘れよう。以前の自分に戻れば何てことはない。あれは夢だったのだ。幸せな、そしてあっという間の夢。夢ならまた何処かで会えるはずだ。悲しむことはない。その時謝ればいい。そしてもし彼が死神と言うのなら、私があの世へ行ったときに表面上では再会出来る。もう彼を無理矢理繋ぎ留める理由はないのだ。




だけど、



「楢橋…」
「…諦めたら、救われますか?」



「私は、今はまだ諦めたくないです。たとえ駄目だとしても私はギンちゃんに会いたい。罰なら私が受けます。二度と会わないと言われても構いません。だけど、最後、本当に最後に伝えなければならないことがあるんです…朽木さん、お願い、…」
「…新嘗部隊長の刀の能力は、分かってるな」
「!…はいっ!」
「市丸隊長に会う前に刺されれば全て終わりだ。…気をつけろよ」
「朽木、さん…!」








「っはぁ、はぁ」



その後、浦原さんという方に案内され死神の格好をして特別ルートで瀞霊廷に侵入した私はひたすらギンちゃんの霊圧に近付くように走り続けていた。浦原さんは少し怪しい風貌をしていたが何から何まで一からお世話をしてくれた良い人だ。霊圧が分かるのも、浦原さんが作った薬を飲んだ為だ。


一旦立ち止まり、物影に隠れて息を整える。薬のせいか霊圧というものが身体ではっきりと感じ取れる。ギンちゃんはこんな…少し冷たくて鋭い霊圧をしていたんだ。ぐっと息を呑み込み再び走り出そうとしたその時だった。




「こんなところでどうしたんだい?」
「っ!!?」


ビクッと肩が揺れる。勢いよく振り返ると其処にいたはずの人はもういない。



気付けば私は地面に寝転んでいた。あれ、私、どうしたんだろう。立ち上がろうにも身体が言うことを聞かない。それに加えて瞼がだんだんと閉じていくばかりで私はゆっくりと意識を失っていった。




そっと目をつむれば



120415
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