何故か今日は朝から全てが上手くいかない日だった。目覚まし時計が鳴らなくて朝寝坊して朝ごはんは食べられなかったし、宿題をきちんとしたのに持ってくるのを忘れたり。そして、天気予報を見るのを忘れて、傘を忘れたり。


すっきりしない空から強弱をつけた雨が降り続く。登校の途中で傘を持っていなかった私は近くの軒下に入り、しばらく雨宿りをしていた。腕の時計を見ると朝礼が始まる30分をとうに過ぎており、完全な遅刻。はぁ、と息を吐く。


薄暗い、灰色の空。私から見た世界は大きいのに、私は世界から見たら本当にちっぽけだ。いてもいなくても変わらない、まるで透明。それは何処に居たって変わらない。


ギンちゃんは、何処にいるんだろう。人間が幻想を抱く空の上だろうか。それとも私の近くに居てくれているのだろうか。私もギンちゃんも同じ透明なら、ギンちゃんが見えてもいいはずなのに。寂しい。じわじわとゆっくり視界がぼやけ始め、ぎゅっと強く目を瞑って俯く。



「忘れてなかったら絶対会えるはずなんや」



ふと、頭の中に響く。いつの記憶だろう。分からない。そんな言葉を言われたことなんてあっただろうか。だけどその声はギンちゃんの声で、冷めきっていた胸が次第に温かくなっていく。ギンちゃん、私はあなたを忘れない。だから、一度でいいから会いに来て。




「、ギンちゃん」



上を見上げると、太陽が顔を出していて、世界を鮮やかな色に飾っていく。しかし私にはその世界は、まだ眩し過ぎる。いつか、この鮮やかな世界が素敵だと思える日が来るだろうか。


そして私は軒下を離れ、歩き出した。しかし、しばらく歩いて感じたのは虚無感。立ち止まり、さっきまでいた軒下を振り返り見た後に、左頬を軽く擦る。何故だろう。さっきから、左頬が少し熱い。



始まらなければ終わりなど見なくて済むのに



だけど、私達は始まらずにはいられないし、何かの始まりしか求めていない私達は終わりがあるなんて、まだ気付くことさえ出来ない。いつだって、全てのことには終わりがくるとちゃんと知っているはずなのに。



100217
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