「はぁ」
「せやから!死神が現世で生きとったときを知っとる人に、会ったことがある死神はおるのって聞いとるんよ」



小春日和の白昼。ふと気になったことがあって、副官であるイヅルに聞いてみた。彼の机上には何重も何重も重なって積み上げられた書類がいくつもあり、それを黙々とひたすら片付けている彼の目元には隈が出来て心無しかフラフラしていて、ボクの質問にはあまり興味がなさそうだった。いや、それどころではないのかもしれない。


「聞いたことないですね」
「ほんまに?」
「大体、死神というのは人間と同じような速さで年をとりません。ですから、現世でいうと隊長は此方にきて既に100年とちょっとは経っていることになりますね」
「100年!?それはあかん!人間死んどるやん…」
「そうですね。ですから聞いたことないです」


再び沈黙が流れる。黙々と筆を滑らせるイヅル。なんや、つまらん


「あ、」
「ん?」
「確かな話では無いらしいのですが、此方と彼方の時間の歪みが出来るときがあるとは聞きますね」
「どういう意味や」
「本来ならば、此方で100年経っているとしても彼方では数年しか経っていないという意味です」
「ほんなら会えるかも―――」




「無理ですよ。まず僕達は現世から送られるときに記憶が無くなってしまいますから。それに人間には死神が見えませんし、事実無理な話です」



それより隊長も仕事してくださいよ、と言うイヅルの発言を無視し、回る椅子でぐるぐると回りながらぐるぐると考えた。運命とか、そんな信者みたいに信じとるわけじゃないし、むしろ馬鹿らしいと思う。叶わぬ理想を追って、期待して、それで死んでいく。なんて馬鹿らしい。



「…一人で想い続けるなんて、悲しいだけやん」



僕だけの宇宙は僕だけじゃ足りない



だけど、ボクの為に泣いてくれた人はいたのか、笑ってくれた人はいたのか、ボクには死ぬほど守りたい大切な人はいたのか。今はただ、それだけが知りたい。



100211
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -