「本当にええん?」
「はい。私はこっちに残ります」


ある昼下がり、私は小さな公園のブランコに腰掛け、ギンちゃんと話していた。ギンちゃんは私にあっちの世界においでと言ってくれたけれど、あっちの世界に行ってしまったらギンちゃんとの記憶が消えてしまうから断った。それにギンちゃんが守ってくれたこの鮮やかな世界をもう少しだけ生きてみたくなったから。



「…ボクの方が離れるの嫌って、どういうことなん」
「大丈夫です。ギンちゃんがまたこっちに遊び来てくださればいい話ですから、ね」


子どものように口を尖らせたギンちゃんが可愛いくて笑みが溢れた。大丈夫。もう忘れない。もし忘れても、また彼と思い出を新しく作っていけばいい。


「ギンちゃん」
「ん?」



ブランコから飛び降り、ギンちゃんの方を向いて、笑いかけた。


「私ね、将来、…ううん。いつか、ギンちゃんのお嫁さんになりたい」
「…なんや、小さい頃の夢と一緒やん」


そう言ってギンちゃんは私の頭を撫でた。そっか。私、あのときギンちゃんのお嫁さんになりたいって言ったんだ。その夢が叶うのは、まだまだ先なんだなあっていう悔しさより、これからもギンちゃんを好きでいれるんだなあって喜びの方がずっと大きかった。


「ギンちゃん。あのね。好き、だよ」
「うん、ボクも」


お互いの記憶が重なり合い、私達は時を越えていく。そうして私達は今日も、鮮やかに彩られたお互いの世界を生きていくのだ。




ちんとんしゃん




101231



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