わんわん泣き出した私に、ラヴは、「薔薇」そう言って差し出した彼の両の手は木の根の様にぐにゃぐにゃと造形を変えて行く。然しとてもじゃ無いけれど彼の作った其れは薔薇とは言い難い。彼は薔薇を見た事が有るのだろうか？ 「何其れ」へらり笑ってラヴの手を握る。木の根の様な彼の手は何度触れても不思議だ。「ラヴ、有難う」「喜んで、呉れたなら、嬉しい」ぽつりぽつり言葉を紡いだ彼を目一杯背伸びして抱き締める。こんなに優しいラヴは私の恋人なんだぞ！ って世界中の人達に言い触らして遣りたい。

「今日、中野先生お誕生日じゃないですか。だからカップケーキ、作ったんです」そう言った司書さんの持つお盆にはカップケーキが沢山のっていた。今日は確か、と日付けを思い出してようやく気付く。成程彼女の言う通り今日は僕の誕生日だ。「覚えていてくれたの？」「勿論です」胸を張る司書さんに思わず笑みがこぼれる。「嬉しいよ」「わたしもお祝い出来て嬉しいです」暫くお互い顔を見合わせて小さく笑い合った。