しとしとと小雨が地面を黒く濡らすある日の午後。陽介の部屋には左近、三郎次、久作、四郎衛兵の二年生仲良し5人組が集まっていた。
5人は部屋の中心に丸く円を描くように腰を下ろし、その中心には紙と筆が置かれその存在を主張している。

「今回一番危ないのはシロだ。」

真剣な表情で言葉を紡ぐ左近に三郎次、久作、陽介が同意するように頷いた。
陽介の隣にちょこんと座る四郎衛兵は緊張した面持ちで左近を見つめる。

「ぼくと三郎次、久作は得意科目で点を稼ぐ。陽介は特にこれといった苦手科目が有る訳でもないから問題は無い。」
「しかしだ。四郎衛兵は得意科目が素晴らしい程外れ、唯一の頼み綱である実技さえ今回は無い。」
「今回は進級に関わるテストだ。何としても四郎衛兵に平均を取らせなければ四郎衛兵が後輩になってしまう。」

優秀ない組の三人が左近、三郎次、久作の順に続ける。
普段周囲にぽわぽわと花を飛ばしている四郎衛兵だが、今ばかりは彼特有の無意識マイナスイオンも蝶々もお花も無く、緊迫した空気だけが彼を飲み込んでいた。
彼等が真剣に話し合いをしている理由、其れは来週に迫ったテストが問題だった。
普段通りのテストならばい組の三人を中心に勉強会を行い四郎衛兵をサポートする。
学年代々継がれる【アホのは組】の名は伊達ではないようで、は組の四郎衛兵は得意科目と実技以外のテストは平均以下が当たり前であった。しかし、得意科目では平均以上を獲得出来ているし、苦手な科目だって四人で教えれば平均点を取れるし、何より実技で座学の悪さを補っていたので何等問題は無かったのだ。
しかし、今回のテストはい組の生徒でさえ溜め息を吐くような問題のテスト。い組が溜め息を吐くようなテストをは組が解けるか?答えは否だ。
何故このような難しいテストになったか。其れは至って簡単な話で、学園長の思いつきだ。この時二年生は学園長に確かな殺意を抱いたとか。

「今日からぼくの部屋に泊まり込みで勉強会を開こう。ここは角部屋故に広いし、ぼくは一人だ。先生方に許可を頂いて来よう。」
「そうだな。みんな、異存はないか?」

陽介の提案に四人は頷き、左近の言葉に口を揃えて返事をした。

「…みんな、ごめんね。」

眉を下げて申し訳なさそうに謝る四郎衛兵に陽介はふわりと優しく笑いかけ口を開く。

「なんで謝るの?一年生の時からずっと助け合ってたじゃん。」
「…はるちゃん…。」
「困った時はお互い様だろ?」
「友達が落第なんて嫌だからね。」
「頑張れよ。」
「三郎次、左近、久作…。」

続いた言葉に、四郎衛兵の丸く愛らしい瞳にじんわりと薄く涙が浮かぶ。
皮肉を言ったような左近だが、その表情は優しく、四郎衛兵を思っている事がよく判る。

「みんな、本当にありがとう!」

さっと立ち上がった四郎衛兵は、明るく嬉しそうな表情をしていた。



だって友達でしょ?
一緒に頑張ろう!


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