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私はふらつく足取りで、仲間の元へ戻った。フレイムさんも、エコーさんも、フラウさんも、イズナさんも、みんなが迎えてくれた。
「よくやったな、イリス」
「本当。貴女のおかげで、世界は救われたのよ」
「やる子だって思ってたよ、俺はずっと!」
「うん。やっぱりイリスはすごいね」
もう4人ともぼろぼろなのに、その笑顔は優しい。殆ど崩れ去った城から出ると、そこには――スケルトンと戦っていたみんなが立っていた。
土まみれになって、けがもしている人もいるけれど、誰一人欠けていない。
「あんたらも無事だったか!」
「俺たちみんな無事だぜ!」
「爆音が聞こえたが、大丈夫か!」
口々に言われる言葉に、私は笑った。良かった。本当に、良かった。
「大丈夫、です。――やっと、終わりました」
一瞬の沈黙の後、わあっと歓声が起こる。喜び合う群衆に礼を述べ、私たちは教会のあった丘へ向かった。
丘の上には十字が一つあるだけで、他には何も残っていなかった。
迫りくる夕暮れが、十字を金に煌かせる。
「イリス」
「はい」
私は振り返る。
4人の体は、蜜に溶け始めていた。
四大精霊様がいなくなってしまったいま、彼らが【そうなる】だろうことは、想像がついていた。
「――行ってしまうんですね」
「必ずまた会えるよ。イリスちゃんが何処にいても俺たち、絶対見つけるから!」
「エコーさん。あんまり女の子ナンパしちゃだめですよ。あと飲みすぎも注意です」
泣きそうな笑顔で彼は頷いた。黄色の風がさあっと吹いた。
「イリスちゃん、今度会ったときは、また髪の毛いじらせてね? お手入れ欠かしちゃだめよぉ」
「はい、フラウさん。今度は私にも三つ編みさせてくださいね」
フラウさんは微笑んだ。水色の風が優しく溶ける。
「イリス、あの。ボク、キミに……本当に感謝してる。絶対恩返しに行くから」
「イズナさん。私も、イズナさんに感謝してます。また、夜空見ながらお話しましょう」
イズナさんは涙をぼろぼろ流して頷いた。緑色の風はゆっくり舞った。
最後に残ったフレイムさんが、私を強く抱きしめる。
「イリス。本当に、ありがとう。ずっと、言えなかったこと、今言ってもいいか」
「はい」

「イリス、お前が――好きだ」
「……私も、好きです、フレイムさん――」

ああ、やっと。やっと言えた。

赤の目が、涙に濡れている。私はそっと彼の頬に口づけた。
「必ずまた、逢いに来るから。だから、待っていてくれないか」
「はい。いつまででも、ここで待っていますから。だから、また、逢う日まで……どうかお元気で」
フレイムさんは泣きながら笑顔で頷いた。
優しい手が、私の頭を撫でる。
赤の風は、そっと頬を撫でて、蜜色の空へ溶けて行った。
「感謝しているのは、私です。本当にありがとう――」
空を見上げ、私は微笑んだ。
一筋の涙は、誰にも見られることなく、丘に咲いた、一輪の白い花へ落ちて行った。




Last Episode10 
【We will meet again】






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