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フレイムさんと連れ立って外へ戻ると、そこには三人がちゃんと待っていてくれた。
「何かあった?」
「はい。この指輪と……手紙が」
エコーさんの問いかけに頷く。指輪は太陽光を受け、スペクトルを放っている。
イズナさんが指輪に触れ、眉根を寄せた。
「これ……どっかで見たことあるような」
「ほんとぉ?」
「でも、思い出せない」
「イズナちゃんが見たことあるってことは、精霊関係の何かなのかな」
エコーさんが首を傾げる。フレイムさんが何かを言おうと口を開いた、その瞬間だった。
強い風が私たちの間をすり抜けた。熱風ではない。
この風は、むしろ――
「ここまで来ていたか。仕方が無い」
「ったくよ、人の話を聞かねえ奴らだぜ」
氷のような冷たい声。凛と涼やかに響く声。
私はこの二つの声を知っている。
固まった体を無理やりに動かして、私は振り返った。
風になびく、暗澹の藍。湖淵の緑。

眼鏡を外したジンさんと、いつもと変わらないフェンリルさんが立っていた。

「――フェンリル、てめえ……っ」
「何だ、エコー。怖い目をしているな」
「あの時! あの時、違うって言ったじゃねーか!」
「言っていない」
ぴしゃりとフェンリルさんは吐き捨てた。くく、と可笑しげに笑うジンさんは、マッフェンであった彼とは別人のようだった。
「俺は、何が違うと聞いただけだ。嘘など吐いていない」
「詭弁を……! 何でだよ! 何でお前まで!」
「うっせえな、黙れよノータリン。サラマンダーに聞いたぜ、呑気な花畑から出て来たんだって? っはは、傑作だなァ!」
「てめえ……!」
ジンさんは背をのけぞらせて笑う。あれは、ジンさんじゃ、ない。
あの時と同じだ。妙に冷えた頭が痛い。
失う。虚無。空虚。
頬に触れた冷たい指先。優しい微笑み。全てが砂漠の砂の様に崩れ去っていく。
「ジン」
「イズナぁ、てめーはなんで【そっち側】なんだ? あァ?」
「ボクはお前とは違う。お前こそ何でそっちに行ったんだ。シルフ様を裏切るのか」
「シルフ様を裏切ったのは人間だろーがッ!」
剣の柄に手を掛けるジンさんの手をフェンリルさんが止めた。
「フェンちゃん、なんでなの……」
「お前たちまで、どうして……」
「フレイム、フラウ。俺たちは選んだ。それだけだ」
私の手を、誰かが握った。
フレイムさんじゃない。イズナさんでもエコーさんでもフラウさんでもない。誰だかわからない。でも、確かに。暖かい手だ。
私は一歩前に出た。
「フェンリルさん」
「イリス。平和の意味を、お前は解ったか?」
「はい」
「そうか。ならば行くがいい」
「おいフェンリル! 此処で始末した方があの方のためじゃねえか!」
「生かせとの、あの方直々のご命令だ」
「ちっ……」
「ジンさん……」
ジンさんは、私を苦々しげに見つめた。
「俺はお前の知ってるジンじゃねえ。理由はイズナにでも聞くんだな」
そう言うと、二人はふわりと浮きあがった。
「ミッテツェントルムで待っている。来れるものなら来てみるがいい」
びゅう、とまた、強い風が吹いた。湧き上がる砂埃にたまらず目を閉じる。
次に目を開けた時、そこにはもう、誰もいなかった。



Re Highthvalm Episode2
【It's just a game】






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