勘違いと妄信癖
大人たちは買い物やら食事の支度やらで、出払っているか忙しそうにしているため、篠姉と私とマサハルくんの3人でお茶を飲むことになった。
「ごめんなさいね、お昼にはみんな揃うと思うから」
「ああ、いえ!…お気になさらず」
篠姉のお母さん…私の叔母に当たる人だ。この家は篠姉の家族とおばあちゃんが住んでいるので、必然的に親戚で集まるときは此処が多かった。
「雅治と和奏は同い年やから今高二?」
「そうじゃ」
「篠姉は今年大学入ったんだっけ」
「そーそ。つっても専門学校やけど」
最近ハマってることとか、学校の話とか、他愛もない話でそれなりに盛り上がって、やっぱり同年代の従姉弟がいるっていいなあとか思ったり。
「あ、パソコン借りてもいい?」
「ええよー。あたしちょっとお昼手伝ってくるわ」
マサハルくんは既にテレビに夢中だったため、気にすることなくパソコンの電源を押して椅子に座った。
思い出すのはやっぱり、さっきのこと。善哉Pに、会えたんだ…!夢じゃないよね?鞄からスケジュール帳を引っ張り出して、そこに挟んでおいた彼からもらった連絡先(といってもフリーのアドレスのようだが)を自分のPCの方のアドレスからメールを送ろうと試みる。
宛先に慎重に間違えないようにアドレスを打ち込む。
そこまではいいものの、その先をクリックしたところで手が止まる。件名、はたまた本文。
「(何て送ればいいんだっ…!)」
よし、落ち着け、宮氏和奏。まず状況を整理しようじゃないか。うん。
@親戚の家に向かう途中人にぶつかった
Aそれが何と我が神善哉Pだった
B自分でも何を言っているのか覚えてないが、ファンです!みたいなことを言った。
Cメールしいやと連絡先をもらってしまった。
→全然マトモじゃねえ……!
落ち着きはしたけどより疑問は増えた。普通否定するだろ顔出しもしてない作り手が自分言い当てられても。ていうかあんなイケメンなの!善哉Pは確かにイケボだとずっと思ってきたけど顔まで、とか…!
いや待てよ。これは夢だったんじゃないか偽者なのではないか。そうだきっとそうだ!うんうん、そう思えばそんな気がしてきた。しかしメールを送らないのも何とも気が引ける…もしかしてあの彼も善哉Pのことが好きなんじゃないか?おおきっとそうだ。お友達になれる。信者仲間が出来たということですね分かります。よおしそうと決まれば早速メールだ!
自分の中で納得してしまえば、もう文面なんてすらすらすらすら出てくる出てくる。
件名:先ほどはありがとうございました!
本文:こんにちは、先ほどはわざわざ道を教えていただきありがとうございました!おかげで親戚の家に時間通りつくことができ、本当に助かりました。
と、それからは貴方も善哉Pが好きなんですよね?と延々魅力を語り(書きなぐり)少し短いかと思ったがキーボードを叩く指がだるくなってきたところで、文脈を見直してメールを送信した。