僕+君=××? | ナノ

ハジマリは突然に


「道を教えて欲しい」という、こっちではあまり聞き慣れない標準語のイントネーションや、俺と行き先が同じだったこと、同い年くらいで、何より「良い声」をしていると思ったのもあって、一緒に付近の駅まで行くことになった。

ただ、どこか不審だった。会ったことがあるか聞いたり、不思議がって首を傾げていたり。ただ、その後に出た言葉には流石に驚きを隠せなかった。

「善哉P、ですよね?」

嘘やろ。俺かて生放送はしても、顔出ししたことあらへんで?イベントも参加せえへんし、周りで俺が善哉Pとして活動をしているのを知っているのは、それこそ同業者であったりして、それでも片手で数え切れる程度。ましてや、初めて会ったことも無いような人に、いきなり指摘されたことは過去一度も無い。

「何でそう思うん?」驚いた表情とこの言葉で、もう俺が善哉Pであることは気付かれてしまっただろう。でもそれよりも気になった事を優先してしまった。

「生放送いつも聞いてるし、声が似てる…から」
あ!違ったらすみません…失礼ですよね。

声だけで、俺を善哉Pだと判断した…って、それはいくらなんでも凄すぎやろ、有り得へん。生放送ではなるだけ標準語使うようにしてたし。

「でも、たまにニヤ生で関西弁使ってるし…」

バレてる。不思議とでも気持ち悪い、とかそういう感情は生まれなかった。それが目の前に立っている彼女が、かなりの目を引く外見をしていたからか。それともその声が少し話しただけなのに、思いのほか綺麗で好みやったからやろうか。



「そや。俺がニヤ動で作り手やっとる、善哉Pや」

ぱあ、っと輝く目が宝物を見つけたような子どものそれと同じに見えて、吸い込まれてしまれるのではないかと本気で思った。