eternity | ナノ

部活から疲れて帰ると、中学時代の同窓会の葉書が来ていた
「今時葉書かいな・・・・・・」とぼやきながらも宛先面から裏返す

同窓会、といってもまだ卒業して二年経っていないので少し懐かしいかと思わなくも無いくらいだ。まあ唯一心残りがあったとするならば最後の一年間で隣だった悠のことぐらいだが、当時ほど恋を意識させられたりはしない。しかし高校に入って1年経っても他の女に惹かれないところを考えると、やはりアイツの存在が俺の中で意外にも大きかったということだろうか。

正直柄でも無いし行く必要性も無いと思ったが、悠のことがあったので少し迷った。葉書を睨みながらその一転に目が行く

「メアド、か…………」

そう、何だかんだ言ってみてもアイツとメールはできるわけやねんけど。でも最初は軽く近況報告こそしたものの、お互い急がしく最近はもっぱらメールはしていなかった。
どうせメアド変えたやろ、と勝手な判断にもよって送るのが億劫になっていたといえばその通りやけど。

「メールしてみるか、」

誰とでもなくベッドの上で呟き、携帯を鞄から取り出してアドレス帳から"遠峰悠"を選ぶ
駄目元と言う言葉がここまで適切な表現であったことも俺の人生では珍しいが、予想に反して10分と待たず返事は返ってきた。

『久し振り、私も葉書届きました!
予定は今のところ無いので行く予定だよ。
財前君は部活忙しいから来れないのかな?』

久々に見たその文を読み上げる声が聞こえるはずも無いのに頭の中に響いた気がした。
迷いは吹っ切れて俺も行くで、と返して葉書にあった元学級委員と思われるヤツのアドレスに「財前光、参加」と送った。



折角だから一緒に行こうということになり、駅前で待ち合わせをした。
いつかもこんな風に待ち合わせをしとったなあなんて感慨に耽っていると、メールの着信音が鳴った。もう着いてる?という簡単なもので俺は携帯を片手にアイツの姿を探した。

「・・・君っ、財前君!」

振り向けば、俺の名前を呼んでいたのは言うまでも無く悠やった。


「おん、久し振りやな。髪伸びたやん」
「そうかな?中学のときはギリギリポニテくらいやったっけ、」

実は大人っぽくて綺麗になっとる、なんて心の中では思っていたけどそれを言えるほどまだ俺は成長していなくかった。ハーフアップにしてさらさらと零れ落ちるような繊細な髪は俺とおなじ黒髪とは思えんほど綺麗だった。
それでも以前の面影は残っていて全く変わってしまっていなかったことに少し安堵する。

少し歩いたところにある喫茶店では、既に当時のクラスメイトの半分ほどは揃っていた。そこはクラスメイトの一人の親戚が運営しているらしく、貸切にしてくれていたようだ

当時班の同じだった6人ずつで座っているようで、俺たちも後期の班員がいる机に向かう


「えらい久し振りやなあ、財前、遠峰」
「元気してた、ふたりともー!」

「おん、」 「久し振りだね、なっちゃん、垣さん」


他の二人は用事でお休みみたい、と補足を聞いて、コーヒーとレモンティーをカウンターでお願いしてから、先に居たふたりの向かい側に悠と腰掛ける


「それにしても二人で登場やとは思わんかったわ!」
「あ、それ俺も思ったわ。今も付き合っとるん?」
「違うよー、というか前も付き合ってないからっ」
「俺らって周りから見て付き合っとる認識やったん?」

もっちろん!と返ってくる。後ろにいた違う班のやつらからも「付き合ってなかったのー??」と同意が入る

「仲良かったからてっきりそうかと思っとったわー」
「あはは、財前君みたいなかっこいい人があたしなんかもったいないよ」

それに、片想いだったしね・・・と誰にも聞こえないくらい、隣の俺がかろうじて聞き取れるくらいの声で呟いてレモンティーを啜った。
今、何て言った?片想い・・・・・・って言わんかったか?

「なあ、今悠何て言った?」
「片想いだったけどね、って言ったかな?」

周りからは「やっぱそうやったんかー」「何で財前フったん?」と口々に質問や納得の声が上がる。いやいやおかしいやろ、何でそんな、当たり前みたいに・・・

「悠、俺のこと好きやったん?」
「今だから言えちゃうけどねー、好きだったよ」
「何や財前知らんかったんか、」
「知らんかったも何も・・・初耳やしな」

いっそ付き合っちゃえばいいじゃーん、と軽い声が飛ぶ
なっちゃんそれ財前君に迷惑だから!と僅かに顔を紅くして、また俯いてレモンティーを飲む

そのまま有耶無耶になったままばらばらと用事だの、食事だので解散していく。流石に人数分の食事はこじんまりした喫茶店(しかも働いているのはマスターではなくこの喫茶店を運営している親戚を持つクラスメイトがアルバイトとしてだけだ)なのでお昼でお開きということになった。

そのあと、俺が当時好きやったこと、今も好きなことを打ち明けたら意外にもまだ悠も好きやったということが発覚。トントン拍子でことが進み付き合うにいたったことは言うまでもない
こんなやり取りでも満足できるくらいには中学の時代にお互い好きで、今もお互い好きやから、多分俺らはきっと結構上手くいく、気の合う恋人同士になれるんやないやろか、なんて付き合って少しもしないのに思ってしまう。

アイツも同じことを考えてくれとったらええのにな、なんて願いつつ。


同窓会で再会、実は想いだったと発覚
(自惚れだって構わないほどに俺はお前に溺れとるらしい)