eternity | ナノ

いろいろな行事もこなし、みんなの受験モードも拍車をかけてきた頃前期が終わり後期になって席替えが行われる。たまに一緒に帰ったり既に名前呼びをしてくれるようになった財前君と離れるのは、少し…いやかなり嫌だったけれどどうすることも出来はしない。

そんな思いから財前君もそう思ってくれてたらいいな、なんて淡い期待からメールを送った

「もうすぐ前期も終わっちゃうね」
『そうやな、早いもんやな』
「今だから言えるけど最初は財前君怖かったんだよー」
『そうなん!?・・・ショックやわー。」
「あ、でも今は全然そんなことないけどね!」
『今もそうやったら俺泣く(笑)』

こんな下らないやり取りも何度したか分からない。3年になるまで財前君は私とは違う世界の人、って感じがして今こんな状況にいるのもあまり実感が沸かないけどそれでも隣の席になれたのは文句なしに嬉しい。


『何だかんだで楽しかったよな』
「そうだね、今思うとあっという間だったな」
『卒業するみたいやな、あと半年あるで?』
「でも財前君の隣はもう卒業だからさ」
『悠の隣なかなか良かったで』


心臓が跳ねる。同じこと、思っててくれた?
願ったのは私のはずなのに今になって後悔している自分がいる
そんなこと言われたら、本気で隣じゃなくなるのが嫌になっちゃうよ。

そんなことはおくびにも出さずでも心の底からの言葉を送る
「私も財前君の隣になれてよかったよ」



・・・ああ、そうか。私はいつの間にか財前君のことを好きになっていたのか
やっと気付けた、この気持ちに名前を付けることが出来た。これが"恋"というものなんだ
私は、財前君のことが好き。そう、好きなんだ。

でも同時に気付かなければよかったとも思った
今気付いてどうする?きっと片想いで、隣じゃなくなったら多分また接点はなくなってしまうだろう。そんなのは辛いだけだ、最後の最後で何故気付いてしまったんだろう


「今までいろいろありがとね、」
『本当に卒業するみたいやからやめろや(笑)』
「だってもう隣じゃなくなっちゃうんだもん」

それが唯一の、私たちの繋がりだったのにね。
だって隣じゃなかったら私たちの繋がりだってどこかに行っちゃうんだよ
嫌だよそんなの。でも仕方がないじゃない、どうしようもないんだよ

視界が霞む。ディスプレイにぽたり、と雫が落ちる


『隣じゃなくてもメールとかはできるやん、』


していいの?なんて聞けなくてそう言ってくれたのは嬉しかったけどもう今みたいには戻れないと思うと涙が止まらない。贅沢だ、我儘だ。そんなの分かってるけどでも!


(・・・・・・・・・今までが幸せ過ぎたんだよ)



それから憂鬱な日々を過ごして終に来てしまった席替えの日。
財前君とはメールで散々話したから特に何も言わず張り出された席の表を見た


「「・・・・・・え」」


ふたつの声が重なる。もちろん私と財前君の声だ
ごしごしと目を擦ってもう一度黒板を見る
間違いない、財前君の隣だ。あれ同じやつ張ってない?


「ねぇ、財前君」「なぁ、悠」
「「同じ席、だよね/やんな」」


「そういうことらしいで、あと半年よろしく頼むわ」
「ふふふっ、こちらこそよろしくね財前君!」


財前君の笑ってる顔って結構レアだなあ、カッコイイ。
この半年でも数えるほどしか見ていないけど、これからまた半年この笑顔が見れると思うと頬が緩んで仕方なかった


席替えで二度連続の席になった
(中学生活最後の一年、彼の隣で過ごす事になるようです)