eternity | ナノ

三年生に進級してクラス替えがあり、新しいクラスで隣になったのは、あの男子テニス部の唯一二年からレギュラーを取っていた財前君だった。なんて私が知ってるのも、彼がテニス部所属でイケメンというかなりの有名人であるからだけであり、今までで接点なんか文字通り皆無だと思う。

始業式の今日は自己紹介とかそんなことを軽く済ませて下校になる。クラスの離れてしまった親友と一緒に、少し例年より遅れた満開の桜が舞う帰り道を歩く

「ハルの隣財前なんや、どんな感じ?」
「んー、まだ喋ったわけじゃないから…よく分かんないけど。でもピアスはしてたけど、怖そうだとは思わなかったよ」

人は見かけでは判断してはいけない、と言われるけどまだ外見以外に彼を判断する材料を私は持っていない。そのくせ、雰囲気からは怖いとか危ないとか、噂になっているようなそんなものは感じられなかった。

「財前君てどんな人なのかな」
「何、財前のこと気になるん?」
「うーん、気になるっていうか…興味あるのかな。」

「気になってるのと興味あるのとで何が違うん。それでもハルが他人に興味持つなんて珍しいなあ」

言われてみればそう…なのかもしれない。なんとなくだけど多分千紘はその興味の矛先が男子に対してであることにも珍しいと言っているような気がする。あくまで主観的な意見だけど。

「あたしの印象で、一言で言うなら個性が強い、やろな。マイペースとって感じもするし…動物に例えると猫とかやろか」

個性が強いっていうのは分かるかも。こんな言い方ってあまり好きじゃないけれど、あの、男子テニス部だし。しかし猫という比喩は私の感じたものとは少し違和感を覚えた。孤独っていうか、そんなところはあってるのかもしれないけど、誰にも懐かなさそうなちょっと近寄りがたそうなとこ…とか。猫にもよるんだろうか。


「あとクールやね。ハルとは違ったタイプの人間に興味ない感じ」
「失礼な。別に人間に興味が無い訳ではないよ」と返すとはいはい、と流される。人間に興味が無い、なんてそんな大袈裟にされるような変わった人間ではないと自覚している。

「ハルは素でそんなんだけど財前は故意でやってると思う」

イケメンだから女子からモテるしそれで男子に疎まれたりってイケメンも良いことばっかじゃないしね、なんて冷静に分析する友人を見ていると彼女は結構すごいやつなんじゃないかとも思ったりする。

「ま、これからは隣なんやし嫌でも色々分かるやろ」

何か分かったら教えてや、なんて千紘の言葉に曖昧に頷いた。隣ってだけでそれ以上の接点ができるなんてこの段階ではまだまだ少しも思えそうにはなかった