eternity | ナノ



あーあ、嫌になっちゃうなあ。

身体が歪むよと言われても、癖になってしまうと治らない「頬杖」をつきながら、心の中で呟いてみる。
昼から降り始めた雨のせいで、なんとなくじめっとしていて、蒸し暑い。まだ解禁にならない扇風機を睨んで溜息を吐いた。


周りの皆が言うほどに私は雨が嫌いではない。
なんてこれだけ鬱陶しがったあとで言っても、説得力は全くと言っていいほど無いだろう。

でも嫌いじゃないのは本当。
水たまりが出来ること、その水たまりに落ちる雨を見ること、水たまりを自転車で通り抜ける事、長靴でぴちゃんと水面を揺らしてみる事、雨上がりの虹の見ることその写真を撮ること。雨音も嫌いじゃないし、思い切って雨に打たれるのにも憧れているけど試せたことは一度も無い。


今日こんなに憂鬱なのは、きっと天気予報のチェックミスでお気に入りの傘を家に置きっぱなしであること。
折り畳み傘はあるから別に困る事はないけれど、雨が好きな理由としてもそのお気に入りの傘があることが大きい。



「・・・げ、傘忘れたわ」


財前君も窓の外を見てそう呟いた。
いつもなら普通の傘と折り畳み傘の二つがあるから、貸すこともできたんだろうけど。
それが出来ない私はどうしようもなく彼の呟きを聞き流す事しかできないのが歯痒い。

そんなことを考えているうちに授業の終わりを告げるチャイムが鳴って、慌ててぼーっとしていて取り損ねたノートを書き写し始めた。


今日は部活も無くて、靴を履き替えて取り出した折り畳み傘を開く。


「おーい、悠ー!」

校門まで来たあたりで名前を呼ばれた気がして振り返る。
鞄を頭に乗せた財前君だった。授業中に行っていたように勿論傘はないんだろう。



「・・・どうしたの、財前君?」

「お前何で傘持っとるん」

「いつも折りたたみは入ってるよ」

「・・・しゃーないから入ったるわ」


奪い取るように私の傘を持って二人の真ん中で差した。
しゃーないから、ってすごく上から目線だなあ、
財前君らしいっちゃらしいんだけど。


「しゃーないから、入れてあげるよ」


彼の口調を少し真似して口を尖らせると、くすりと彼は笑った。

なんて呑気なやり取りをしてみたけど、
これってもしかして・・・!俗に言う相合傘とやらなのでは!?

顔を真っ赤にしていても財前君は気にする様子も無い。
この前の間接・・・キス、の一件といいどうやら彼はそういうところを気にする節が無いし、鈍いのか、わざとやっているのか分からない。


私はこんなにも意識させられているのに。
少し空回っているような、空しいような気持ちにもなった。

でも一つの傘の下に二人でいられる距離が、隣の席にいるよりも近く感じられて、このドキドキが伝わってしまわないかと緊張しての繰り返しだ。



あああ、こんな調子で駅まで辿りついた時は私はどうなってしまっているんだろう。不安になりもしたけど、ああこの不安に押しつぶされて壊れてしまうならこんなに幸せな事はないと思った。