こっち向いてベイビー | ナノ





シズちゃんの優先順位の一番はいつだって彼の麗しい弟だった


「あ、悪い幽から電話だ」

ほら、今だって恋人の俺といい雰囲気になって、後少しでシズちゃんをメロメロにしてベッドインってところだったのに、無情にも鳴り響いた携帯着信にシズちゃんは遠ざかっていった
俺はシズちゃんと会うときは仕事の電話がこないように出来るだけ電源を切ってるのに、シズちゃんはめったに着信がこないからって消すようなことはしないらしい
細かい作業は大嫌いなくせに、弟の着信音だけ違う音に設定してるのも実に気にくわない
俺は怨めしげに弟と楽しそうに会話するシズちゃんを見つめる、はだけたシャツと首筋につけた痕がさっきまでの行為の名残を感じさせて、ムラっとする
しかしシズちゃんは後ろから見つめる俺を知ってか知らずなのか、俺をチラリとも見ることなく、弟がかわいくて仕方ないと言うのを隠しもせず会話を続けている

「うん、次は海外なんだな…あぁ、少しだけ…」
「…シーズちゃん」

シズちゃんは話しかける俺を怪訝な顔でみて、人差し指を薄い唇に当てた、可愛らしい仕草だが案に黙ってろの意だ
やっぱり気にくわない
恋人より家族を優先するのは、まぁ仕方ないとは思う
だが、この兄弟のブラコンはおかしい
どこに兄の仕事着を20着ポンと買い与える弟がいる、どこに高級マンション一戸を兄にプレゼントする弟がいるというのだ
この弟がマンションなんて与えたから、今シズちゃんと俺は一緒にすむことができないのだ(一緒に暮らそうと言ったら「幽から貰ったマンションを手放すことはできない」と一蹴りされてしまった)
弟も弟なら兄も兄だ、いくら弟が俳優活動で多忙でめったに会えないからといって、恋人をほっといて電話をするのはどうだ、しかも相手から切ろうと言うまで自分からは決して切らないのだからたちが悪い
そのうえ、何かあるごとに幽が〜、幽が〜、と話す、まるで愛しい恋人の話をするようにだ
恋人は俺なのに!!

「ん、あぁ別に忙しくなかった、うん」

こうして悶々している俺を尻目にシズちゃんとその弟は電話を通して盛り上がっている
憎い…

「そういや、こないだの雑誌に、ぅあっ」

俺に背をむけるシズちゃんが憎かったので、彼の項にチュッとキスをした、どこもかしこも敏感なシズちゃんは弟と電話をしてるにも関わらず、ビクンと反応する、可愛い
そのままシズちゃんを後ろから抱きしめる、腹の前で手を組んで逃がさないように

「いっいや、なんでもない、物音に少し驚いたくらいで…」

相変わらずシズちゃんは電話を切る気は無いらしい
弟に先程の奇声の言い訳をしながら、俺に振り向き攻めるようにに睨んでくるが、そんなものは春の陽気だ
俺は気にせずシズちゃんにキスを与え続ける

「んっ、あぁ…そういや、だから…っなんでも」

シズちゃんも意地になってるのか一向に電話で話を続ける
やっぱりそんなシズちゃんが憎たらしくて、彼の右手に持つオレンジ色の携帯をバッと取り上げた

「あっいざやってめぇ!!」
「シズちゃんは俺とだけ話してたらいいんだよ」

携帯の向こうにいる相手に聞こえるように言い放ち、通話と一緒に電源も切った
シズちゃんは恨めしげに睨みつけてくる
これでシズちゃんは今俺しかみてない、その事実に俺はにやけてくる

「なにニヤニヤしてやがる…幽との電話切りやがって、ふざけんじゃねぇぞ」
「だってシズちゃんが俺といるのに弟くんとばっかり話すんだもん、シズちゃんの一番は弟くんだもんねー」

と嫌みったらしく笑う
男の嫉妬は醜いって言うのは百も承知だ

「お前…妬いてんのか?」
「そうだよ、弟くんより俺を大事にしてよ」
「むりだ」

きっぱりと言い放たれる否定にやはりと思いつつ、凹む

「でも、一番はお前だから」

顔を真っ赤にして逸らしながらいうシズちゃんに釣られて俺も真っ赤になった






こっち向いてベイビー





「これでシズちゃんが一緒に住んでくれたらいいのに」
「お前が俺んちに帰れば良い話じゃね?」
「………え、それでよかったの?」




タイトルは初音の曲から頂きました
前にシズちゃんを嫉妬させたので、今回は臨也さんを嫉妬させてみました
幽くんやトムさんにデレデレなシズちゃんをみてもやもやイライラしたらいいですよ







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