青い鳥が運ぶ | ナノ





羽島幽平がツイッターをしているのは以前から周知の事実だった
しかし彼の呟きと言えば「ロケ中」、「昼食」、「移動中」とどれもいかにも事務的で、話題性のためにと事務所から言われて渋々やっている…そんな様子だった
羽島幽平をフォローしているユーザーの数は五桁を優に越しているのに対して、本人がフォローしているのは限られた人数しかいない

しかし最近…その羽島幽平のフォロワーの話題で持ちきりであった

事情はこうだ
数少ない羽島幽平と相互フォローしているユーザーの一人だけに羽島幽平がリプライで
「ありがとう、大好きだよ」
と、飛ばしたからであった

熱烈なファンの間ではそのユーザーが誰なのか審議が行われていたが
リプライをとばされたユーザーはいかんせん非公開で、プロフィールをみる限りでは「池袋在住」としか分からなかった
ファンやマスコミはそのユーザーを羽島幽平の本命かとはやし立てるが、肝心の幽平は口を閉ざしたまま謎のユーザーについてはなにも情報のないままだった



『静雄は最近よく携帯をいじっているな』
「そうか?…そうだな、こないだ幽に誘われてツイッター始めたんだ」
『弟君にか?』

離れてても自分の状況が分かるからって…と嬉しそうに静雄は微笑んだ
いつもの公園でセルティと静雄の二人は噴水脇のベンチに座っていた
全く携帯を使わない静雄が今日あってみたら、結構な頻度で携帯を開き、打ち込んでいる
素朴な疑問が浮かびセルティが尋ねてみたところ、そういった理由らしい

『実は私と新羅もツイッターをしているんだ、静雄のことフォローしていいか?』
「おーいいぞ、どうすればいいんだ?俺始めたばかりだからよ…」

静雄が気まずげに尋ねればセルティは優しく指を指して説明してくれる
フォローの仕方、用語の説明、そして静雄の動向を知って仇討ちしにくるかもしれない輩の対策に非公開の設定、最後にリプライの飛ばし方を教えてあげた

「…なるほど…この『@』とアカウント名がついてるとそのアカウント宛てなんだな」
『そういうことだ、どうだ?使えそうか?』
「あぁ…たぶん…ありがとうなセルティ」

そういって静雄は立ち上がり、帰路についた

その日の夜
風呂からあがった静雄がツイッターを確認してみれば、早速新羅からフォローリクエストがきていた
別にフォローしない理由もないので、許可を押しておく
そしてTLを確認すると、誘ってきた幽がつぶやいていた

『休憩中』

これまた事務的だったが、兄として弟の仕事っぷりには感服するくらいだった

「…これ…リプライしてみっか…」

静雄は誰に言うでもなく一人呟き、なれない手つきで携帯を打っていく

『仕事お疲れ様、友人から色々使い方習った。頑張れよ。』

愛想がないが、静雄の精一杯だった
もうすでに兄としての威厳は無いに等しいが、弟思いなのは相も変わらずだ
幽からの返信は早かった

『ありがとう、大好きだよ』

少し的外れな返答に静雄は頬をゆるめた


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