愛妻弁当 | ナノ





真冬の快晴
気温と風は肌を刺すように寒いが、日差しは暖かい、そんな陽気の中の昼休みだった
いつもなら屋上で昼食をとる静雄と新羅もあまりの寒さに断念して、暖房の利いた一般教室にいた

「あれーシズちゃんなんで教室にいるの?」

静雄と新羅でお弁当を食べていると、静雄の後ろからどこか頓狂な声がした
声の主はそのまま静雄に近づき、彼の弁当の唐揚げを一つ取り上げ口にほおりこんだ

「あっ臨也ぁっ!?手前俺の唐揚げ!!」
「んーちょっと薄味じゃない?お母様に塩足してくれるように言っといてよ」
「俺の好みで作ってんだ、よけいなお世話だ!!」
「え、シズちゃん作ってるの!?」
「静雄は前から家事のお手伝いするいい子だったもんね」

新羅が茶化すと、静雄は恥ずかしかったのか俯いたまま自分の弁当の卵焼きをつまむ
たしかに静雄は弟がいたせいか、ちゃんとお兄ちゃんとして自分のできる範囲の家事なら昔からこなしていた
その事があまりに衝撃的だったのか、臨也は口の中の唐揚げを思わず飲み込んだ
味は薄いと思ったが美味しい

「え?新羅それ本当なの?」
「嘘じゃないよ、汚れたシャツ洗ったり、学校の帰りにスーパーに寄ったりしてるし、弁当だって自分のだけじゃなくて、中学生の弟君の分だって作ってるんだよね、静雄」
「ふん」

やはり臨也の事は気に入らないのか、そのまま無視を決め込んで残りの弁当を咀嚼する
冷凍食品も入っていない、実にきれいにできた弁当だった

「シズちゃん、俺の分も作ってきてよ」
「はぁっ!?」
「だからさぁ、親が忙しくって、俺いっつも買い弁なんだよね〜シズちゃん俺の分も作ってきてよ」

ほら、俺ってかわいそうでしょ?
とのたまる臨也に新羅はこのまま喧嘩が勃発するなと覚悟した
しかし静雄は情に熱かった

「いいぞ、作ってきてやるよ」




それから一週間、静雄は毎日欠かさず臨也にお弁当を作ってきていた

「まったく…シズちゃんも人が良いって言うか、バカ正直って言うか…」
「いいじゃない、なんだか愛妻弁当ってやつみたいじゃん?」
「新羅ってば気持ち悪いこと言わないでよ」

臨也と新羅は放課後二人だけで会話をしていた
静雄はというと、いつもの通り暴れてしまい、教師に呼び出しを食らっていた

「臨也ってば静雄から弁当もらってる癖に、いつも僕らと一緒に食べないよね」
「俺にもいろいろあるからね」
「弁当捨ててるからだろ」

臨也は黙った
しかし表情の変化はなく、口元だけ笑っている

「僕知ってるよ、みたからね、臨也が静雄作った弁当をゴミ箱に捨てて、美味しかったよって弁当箱だけ静雄に返してるの」

新羅は怒るでもなく静かに言う
それが逆に何を考えているのか分からないのだが
臨也はそんな新羅に肩をすくめた

「あはは、新羅にはかなわないなぁ…そうだよ弁当は捨ててた。俺がシズちゃんの作ったもの食べる訳ないじゃん。あいつへの嫌がらせだよ」

高らかに笑い、そう返す臨也に新羅はため息を吐く

「確かに君が静雄を嫌っているのは知ってるさ、まぁそれが本心なのかは置いといて」
「は?なにそれ、まるで本心じゃないみたいに言わないでよね」
「今はその話じゃないだろ。ただ僕は今回のやり方は感心しないね、食べ物を粗末にするのはダメだろ」

新羅はそれだけ言い放つと机から離れ、教室を出ようとする
すると入り口で止まり

「まぁ…静雄は知ってたよ」

今度は本当に出て行ってしまった
しかし次に教室に入ってきたのは静雄だった

「…シズちゃん」

さすがにまずいと思った
きっと静雄は先程の二人の会話を聞いていたに違いない
臨也はこの場所からどう逃げるか考えを巡らせていた
黙っていた二人、先に口を開いたのは意外にも臨也だった

「俺が弁当捨ててたの、シズちゃん知ってたの?新羅から教えてもらったとか?」
「…別に、弁当箱みたら分かる…てめぇ仕切りのカップやバランまで捨ててたろ」
「…っ」

盲点だった
臨也は全く弁当を作らない、つまり弁当箱を洗うこともしないのだ
バランやカップまで食べるわけがないのだから、捨てたと考えるのはおかしくない

「シズちゃんは…わかってて、俺に弁当作ってたの?」
「…」
「は、ははっ…じゃあなに、シズちゃんは食べられる事のないって知ってる弁当を毎朝作ってたってこと」
「…心配だったから」
「…は?」

静雄の一言に臨也は目を丸くする
彼がなにを心配しているのか分からなかったからではない
分かったから驚いたのだ

「臨也が、いつも買ってるもんで昼飯済ませてたから、栄養とか心配で…ほせぇし…ちっせぇし」

小さいのは静雄が高身長だからそう見えるだけだ、 と臨也は口に出せず思う

「シズちゃんは…俺が心配なの?」

その問いとともに静雄に近づき、俯く彼の顔をのぞき込むと
静雄は真っ赤になりつつも小さくうなずいた

(あ…かわいい)



愛妻弁当







「シズちゃん…明日も作ってくれる?」
「どうせ、捨てるんだろ」
「ううん…一緒に食べちゃダメ?」
「……っ」
(また真っ赤になってる…かわいい)





臨也がとんでもないゲス也になってしまいました
リクエストの家庭的な静雄が書けているのか…怪しいですが
たまには一途なシズちゃんもいいかなぁって…実にすいません
ご飯は大切に!!

南さま!
リクエストありがとうございました
家庭的シズちゃんかどうか怪しい上に勝手にイザシズにしてしまいすいません。
萌と癒やしがこのサイトにあるかは分かりませんが、ニヤニヤしてもらってるのは嬉しいです!!私もニヤニヤします!!
駄文よろしければ持って行ってやってください


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