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二人は内宮に到着した。鳥居をくぐり、青々とした背の高い木々の中を進む。

「皇室が結婚するとき、お参りに来るらしいな」

「ふうん」


聖川の台詞に、もしかしてお前、意識していたのか?と疑問に思ったが、口には出さなかった。


実家に挨拶に来て欲しい。
一生一緒にいて欲しい。

以前、聖川の妹の結婚・妊娠をきっかけに、二人の関係が気まずくなったことがあった。


聖川は責任感が強い人間で、誰かのために力を発揮できる男だ。後継ぎの責任を放棄し、アイドルになったことには折り合いはついたようだけど、男と付き合って一生生きるのとはまた別の話だ。
けれど、彼は両方が欲しいと言った。家族も、神宮寺も。


傲慢な男だ。どちらも守ろうとして、どちらも失ったら、どうするつもりなのだろう。いつも最悪を想定して行動する神宮寺には理解できない。


聖川の実家に行くときを、神宮寺は想像した。


おたくのお子さんと交際させていただいております。はい、男です。はい、そちらとライバル関係の神宮寺財閥の三男です。はい、学生時代から同室で、こちらから半ば強引に奪いました。

できるわけ、ない!


まともな神経なら、できるわけがない。聖川は少しおかしいのだ。肉親であっても、理解しあえないことはある。そこをうまくやるのが、互いの幸せに繋がる。


けれど。


そのうまくやれない、真っ直ぐさ、不器用さに、神宮寺は惹かれたのだった。


御堂を前に手を合わせ目を瞑る聖川の横顔を覗き見る。


その表情に決意と覚悟が見える。


大切に思われていると、わかっている。誠実に誓っていると、気付いている。


疑いは、覚悟の足りない神宮寺自身が作り出した弱さだ。


風が二人の間を吹き抜けた。


理想を追うこの強い男に、自分は追い付けるだろうか。


神宮寺は手を合わせ、せめてこの男の隣に立っていたいと、切に願った。




「今度はきちんと願えた」


足取り軽く、帰りのバスまでの道を戻る。
聖川はにこやかに神宮寺に話した。


「何を願ったんだ?」


「一生幸せにする。また、共に幸せになると。そのために、俺は努力を惜しまない、と。」


「お前、それは願いじゃない。誓いだろう」


神宮寺が言うと、聖川はそうだな、と柔らかく微笑んだ。


「なあ、お前は?神宮寺」

聖川の瞳の奥が揺らいだ、気がした。


「俺?俺は願えたよ」


ことさら、優しい声で伝えたかった。聖川の指を己のそれで絡めとり、彼にだけ聞こえるように、耳元で語りかける。


「お前の隣にいたいってさ」


自分だけの願いを、二人だけの願いに変える。聖川は安心したように息を吐く。


神様に背を向けて二人、今はこの指先で繋がっていたいと、神宮寺は思った。



and…?




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