キラキラ☆ラブレッスン


トキヤの手は冷たい。本当に血が通っているのか、不安になる時がある。

寮の部屋、ベッドの上で、掴まれた手首に目を向けながら、音也は思った。


「音也……」


陶然とした瞳で名前を呼ばれたかと思うと、そのままキスされた。嫌悪感はない。けれど、もう何回もしてるのに、違和感は拭えなかった。


キスや、その先の行為は、女の子とするもの。それが常識だと思っているから。


唇を開くと、ぬるっと舌が侵入してきた。上顎を音を立てて吸い付かれ、身体から力が抜けていく。


「音也、息」


「ふぁ……」


解放された唇から、やっとのことで酸素を吸い込む。と、間近でトキヤがクスリと笑んだ。



「可愛いですね」


「んっ…」


耳元で吐息混じりに囁かれ、音也は肩を震わせた。


ぎゅっと抱きよせられ、トキヤの熱を感じると、自分が持っている常識などどうでもよくなってくる。


「またするの?あれ」


「嫌ですか?」

不安げにトキヤの瞳が揺れた。音也は焦って首を振る。


「ううん。」


嫌ではなく、恥ずかしい。それからちょっと情けない。音也はそう思っていたが、本心を告げることはしなかった。きっとトキヤが傷付くと思ったから。


音也の方からキスをねだると、トキヤはほっとした顔を見せ、音也の目尻をぺろりと舐めた。


「音也……」


後ろからスラックスに手を挿入された。下着の上から柔らかく尻を揉まれ、音也はぎゅっと目を瞑る。


やっぱり後ろで繋がるのはまだ慣れない。なんというか、「エッチ」じゃなくて「セックス」という感じで。いや、実際「セックス」をしているわけなんだけど。


「ん……」


トキヤが触りやすいように腰を浮かせて、トキヤに触れる。其処はもう達せるくらいに固くなっていた。


尻を揉む手は止まらない。下着の中に差し込まれた指先が、ゆっくりと入り口に伸びてくる。


トキヤの屹立を握る。同時に尻に感じる異物感に、音也はひくっと喉をひきつらせた。

「大丈夫です。音也は知っているでしょう?ここでもちゃんと気持ち良くなれるって」


「うん、でも」


やっぱり最初は痛いし落ち着かない。


気をまぎらわせようと、先端から先走りを溢すトキヤ自身を握る。すごい硬度で天井を向くそれは美しい形をしている。

初めて見たとき、綺麗な人はここも美しいんだと、感心した。


「っ、音也、」


先端を包むように擦りあげると、トキヤが息を詰める。


「えへへっ、トキヤ、気持ちいい?」


「あなたって人は…」


おどけて言うと、トキヤは熱っぽく囁きため息を吐いた。


「だって、トキヤのここ可愛いんだもん。怒った?」


「怒りました」


全然恐くない、甘い囁きと同時に、入り口をなぞっていたもう一本の指を強引に挿入される。


「んっ、……くぅ」


反射的に口を手で覆う。倍になった異物感に目尻に涙が溜まった。


内壁の快感のツボを巧みに刺激され、固くなり始めた自身も手の平でなぞられる。ぞくりとする感覚に音也はいやいやと首を振った。


「んっ……う…」


鼻にかかった、女の子のような声が出てしまうのが嫌で、音也は唇を噛む。


「音也……」
耳元で名前を呼ばれると、自分でも分かるほどに中の指を締め付けてしまう。音也はトキヤの声が好きだった。



「挿れていいですか?」


だからその、耳元で言うのをやめようよ!


トキヤはきっとわかってやっている。音也はそれが悔しいけれど、抗うことが出来ない。


トキヤの指でしっかりと解きほぐされたそこは、普段とは別の器官になったみたいに、甘く疼いている。


音也は小さく頷いて、トキヤの首に腕を回した。


トキヤの猛った屹立を、座って抱き合った状態で受け入れる。


「ん……」


入り口を拡げられる感覚に身震いしながら、音也はゆっくりと腰を下ろす。


なぜこんな不自然なセックスをするのか。音也はわからない。

けれど、美しい体に抱き締められ、自分ですら知らない部分を暴かれる感覚は気持ちよかった。

もしかしたら、この感覚が「好き」という気持ちなのかもしれない。



「音也、無理はしないでくださいね」


「ん。大丈夫…、入る、よ」


両足をトキヤの腰に絡め、ぎゅっと奥まで呑み込んだ。トクントクンと、互いの心音が聞こえる。


「奥まで入りました。偉いですね」


「っ、……トキヤ、気持ちいい?」


「とても気持ちいいですよ。しっとりと私に絡み付いて…どうにかなってしまいそうです」


うっとりと、トキヤが音也を見つめる。その真っ直ぐな瞳に戸惑いながら、音也は自分から触れるだけのキスをした。


「……いい、よ?どうにかなって?」


圧迫感なのか充足感なのか分からないままに、ただトキヤの熱に朦朧としながら、甘えたような声を出す。

トキヤは唇の端だけで笑み、下から熱塊を打ち付けてくる。


「ぁっ…、ん……っ、トキヤっ……」


「音也…、もっと声を聞かせてください。可愛い……」


激しく腰を打ち付けられ、摩擦で内壁が熱く熟れていく。


トキヤずるい。これじゃあ俺がどうにかなってしまう。


「んっ……く……んぅ」

「音也、愛しています…!」


腰骨がぶつかる音、ベッドが軋む音色、歌うような睦言に、頭が蕩けそうになる。

気がつくと、互いに勢いよく欲望を吐き出していた。



「ねえねえ、トキヤ」


セックスの後は、潔癖症のトキヤはすぐにシャワーを浴びる。音也も毎回、休む暇もなくそれに付き合う。

シャワー後に、音也はけだるげにベッドに身を投げ出しながら、体を拭くトキヤの背中をつついた。


「なんですか?音也?」


白くて綺麗な背中。滑らかな肌触り。彫刻みたいな筋肉で、音也の理想がここにある。



「なんで俺とエッチするの」


「またその質問ですか」

トキヤか呆れた顔で振り返る。そういえば、セックスする度に聞いていた。


愛想笑いを浮かべると、トキヤは無表情のままぼそっと答えた。



「好きだからに決まっているでしょう」


「またその答え」


「変わりませんよ、答えは」


トキヤの真っ直ぐな瞳に、音也は安心を覚える。
きっと、俺の疑問だって、変わらないよ。

だからねえ、何度だって教えて。


好きの意味。愛しているの重み。触れ合い生まれる熱の行き先。

微睡みの中、トキヤに優しく頭を撫でられた。


気持ちよくって、誇らしい。その指先は、ちゃんと温かかったのだ。


END



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