10
達した後の倦怠感のままに微睡みながら、聖川は神宮寺の上に重なり、指を絡めた。


「聖川、重い」


「いいだろ?さっきは大人しく乗られたんだ」


「はいはい」

首筋を吸うと、神宮寺は欠伸をしながら了承した。

神宮寺の指先は少し冷たかった。聖川が感触を確かめるように、優しく撫でる。


「なあ、俺とお前、どっちが先に死ぬかな」


神宮寺が淡々と、独り言のように呟いた。


「遺伝的に言えば、お前じゃないか」


聖川が真面目に答えると、神宮寺はそうだよなあ!と笑い出す。


「神宮寺?」


「よかった、俺」


絡めていた神宮寺の指が離れていき、額を覆った。手を合わせているわけでもないのに、天を仰いでいるせいだろうか、祈っているように見えた。


「俺は嫌だぞ。お前が先に死ぬのは」


聖川が本心を伝えると、神宮寺の唇が笑みを形作るのが見て取れた。


「俺の台詞だ。しかも、俺の方が本気だ」


神宮寺の声は掠れていた。その声は確かに切実に響いていた。


「そんなことを本気で思うなよ」


聖川は困ったように笑う。時々この男は、不思議なくらいネガティブだ。

「どうして?本当のことだ」


「確かにそうだが…」


聖川は、少し悩んで、顔を覆う神宮寺の左手を掴み、自分の口元へ持っていく。
露になった神宮寺の表情は不思議そうだった。泣いてはいなくて、少し意外だった。



「病める時も、健やかなる時も、死が二人を別つまで……」


「聖川?」


「あなたを愛すると誓います」


聖川の突然の誓いに、神宮寺はたじろぐ。けれど、その視線がそらされることはなかった。


「お前は?神宮寺」


神宮寺の薬指にキスを落とし、尋ねた。


「……馬鹿だな」


「答えてくれないのか?」

聖川は傷付いた表情を見せる。神宮寺は掴まれていた手のひらを振り払い、早口で答えた。



「誓わない。お前が死んだって、俺はお前を愛し続けるんだからな」


聖川は心の奥がすっと軽くなった。次に、神宮寺の頬が紅潮しているのが目に入ると、心音のリズムが段々と早くなっていった。


「すごい誓いの言葉だな」


「重いだろ」


「いや、嬉しい。天にも昇る気分だ」


「死ぬな、馬鹿」


二人顔を見合せ、吹き出した。

聖川は神宮寺の背中に手を回し、力いっぱい抱きしめる。


大切に大切に、自分の感情のままに、神宮寺の体を包み込む。


幸福な心地に身を委ねていると、いつの間にか夢の世界に旅立っていた。


HAPPY END ??




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