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数日後、ST☆RISHの看板番組の収録があった。


5年ほどやっている長寿番組で、メンバーのトークやライヴ、コントなどのバラエティ要素で構成されている。

トークの収録中、最近のメンバー間であったことがテーマに上がり、神宮寺が話を切り出した。


「そうそう、この前、聖川の妹の結婚式に行ったよな」


「あー、そうだったね!マサ、改めておめでとう!」


「ありがとう、一十木。妹に伝えておく。みんな忙しい中来てくれてありがとう。妹も喜んでいた」


「よい挙式でしたね」


「とってもきれいな花嫁さんでした」


「旦那さんも、優しそうな人だったな」


一ノ瀬、四宮、来栖が順にコメントをくれ、聖川はくすぐったく感じた。祝いの言葉は既にもらっていたが、カメラの前で言われると、違う感覚を覚える。



「それでさ、こいつ、帰り途中に…」


「神宮寺!」

聖川は神宮寺の含みのある笑みに、焦って名前を呼ぶ。しかし、むなしい抵抗に終わった。


「えー、なになに?」


「あの小さかった妹が〜って、号泣してたんだぜ。可愛いよな?」



あっけなく神宮寺に暴露されてしまい、聖川は頭を抱えて脱力した。


「マサ、じゃあ我慢してたんだねー。式の間は、堂々としてたのに」


「仕方ないでしょう。聖川さんは学生時代も、妹さんに暇さえあれば手紙を書いていたような方ですし」


「うんうん、マサトくん、可愛いですね〜」


「ま、式で泣かなかったのは偉いな!」


各々のコメントに顔が熱くなるのを自覚しながら、聖川は咳払いした。



「まあ、その、ちょっと気が緩んだのだ。しかし恥ずかしいな。神宮寺、恨むぞ」


「ははっ、ごめんごめん。悪気はないぜ?家族思いでいいよなって話だよ」


神宮寺は軽く聖川の肩を叩き、トークコーナーの収録は終了した。


メンバーか次々にスタジオから出る途中、聖川は複雑な思いで神宮寺の背中を見つめていた。


もちろん、聖川も本気で怒っていたわけではない。神宮寺にいじられるキャラクターという立ち位置も、理解している。


ただ、聖川は神宮寺の前だから涙を流したということを、神宮寺はあまり深く捉えていないような印象を受け、少しだけ傷付いた。


十年経っても、彼の掴み所のない性格は変わっていなかった。

変わって欲しいわけではない。しかし、ふとした瞬間に、自分は愛されているのだろうか。この先も一緒にいれるのだろうか。そんな疑問が浮かぶことがある。


漠然とした不安は、聖川の胸にいつも渦巻いていた。




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