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聖川は足をふらつかせながら、玄関の扉を開けた。こんなに酔ったのは初めてかもしれない。

けれど、今日くらいは同居人も、笑って許してくれるだろう。


【after ceremony】


「いい式だったな」

神宮寺がしみじみと、聖川に言う。笑うと目尻に優しげな皺か寄る。褐色の肌が、グレーの上質なスーツによく映えて、圧倒的な存在感があった。

それは式場でも同じことで、聖川は逐一神宮寺のことを視界にとらえていた。神宮寺と付き合うようになり約10年が経過しているが、変わることはない。


「ありがとう」


聖川が言う。瞬間、現実味が増して、じわりと涙が目尻に浮かぶ。


式では、格好悪いからひたすらに我慢していたが、自宅に帰ると、一気に涙腺が緩んだ。


「おいおい、聖川、泣いてるのか?」


神宮寺が呆れながら、聖川の背中を支え、ソファーへと座らせる。


「違う、これは、断じて悲しいわけじゃない。ただ少し、感動してっ」


ひくっ、としゃっくりがなると、神宮寺は声を上げて笑った。聖川はそんな神宮寺を恨みがましく睨む。


「そういうお前は、楽しそうだな」


「だって、祝いの席だ。笑ってないとな。だから、式で泣かなかったのは偉かったな」


神宮寺が子供をあやすように聖川の頭を撫でた。


不覚だ。そりゃあ、長く一緒にいるのだから、格好悪いところはたくさん見せているけれど。いい大人が泣いているところを見られ、恥ずかしくないわけがない。


「まあ、良かったじゃないか。いい人そうだったし。お前もやっと、妹離れ出来るな」


神宮寺か優しく囁いた。

そう、今日は妹の結婚式だったのだ。







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