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聖川との関係に悶々としながら数日間が過ぎた。
神宮寺は聖川に誘われ、学校の図書館に来ていた。

一緒に勉強をしようと言われるままついてきてしまったが、集中できるわけがない。


教科書とノートをかろうじて開きながらも、向かいに座る聖川を観察する。


聖川は真剣に教科書の内容をノートにまとめている。

シャーペンを軽やかに滑らし、時折手を顎にあて思案する姿は、妙な色気があった。

普段から仏頂面だが、集中しているせいかいつも以上に表情は無表情に映る。


聖川が何を考えているのか神宮寺はわからない。
昔から、思考回路が全く違うため、無駄なことだとわかりきっていた。


ただ、知りたいと思うと、邪推してしまう。


どうして図書館に誘ってくれたのか、とか。


デート後も特に何もなかったが、聖川も少しは意識してくれたのか、とか。



シャーペンの芯が紙を引っ掻く音に、神宮寺ははっと我に返る。


馬鹿馬鹿しい。

期待した自分を自嘲し、聖川から視線を外した。

聖川は神宮寺がしたことに、全く気付いていないようで、あれから態度も変わらない。きっと、興味などないのだ。


窓の外に目を移すと、大粒の雨がガラスを叩いていた。


もう3月に入ったというのに、天気の悪い日が続いている。


天気が悪いと、それだけで憂鬱になってくる。ぼんやりと頬杖をついて眺めていたら、集中していたと思っていた聖川が声をあげた。

「最近寒い日が続くな」

「ほんとだな。3月だっていうのに」


「なあ、神宮寺」


真剣な声音に少し驚き聖川に目をやると、彼はこちらをじっと見つめていた。


「なんだ」


「温かくなったら、一緒に花見でもしたいな。」

聖川はそう言ってふわりと笑った。緊張していた神宮寺は拍子抜けした。


「ああ、そうだな」


「桜っていいよな。儚いけれど、綺麗で。」


聖川はそう呟くと小さく息を吐き、薄暗い窓の外に目を向けた。


未来に期待しているような、生き生きとした笑顔をしている。


神宮寺は、少なくとも桜が咲くまでは、聖川は自分と一緒にいるつもりなのか、と思った。


馬鹿げた話だが、たったそれだけで気分が浮上した。


「ちょっとトイレ」

「ああ」

気恥ずかしくなって、神宮寺は席を立った。







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