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やってしまった!

デート当日。予約していた店に聖川を連れて赴いたところ、予約日を1日間違っていたことが判明した。

既に店内は満員で、翌日にまた伺うということで、店を後にする。


神宮寺は聖川に恥ずかしいところを見せてしまったと、不貞腐れた表情で歩く。



「別にいいではないか。明日また来れば。」

聖川は無邪気に笑い、肩をすくめた。


「それはそうだが。こんな失態は初めてだ」

「そうなのか?しかし、お前も意外に抜けているのだな。」


聖川は面白そうに、唇を尖らす神宮寺の手を取った。


「今日はかしこまった食事などはせず、ゆっくりしよう。俺は、ハンバーガーというものを食べてみたい」


「えっ、お前食べたことないのか」


「前に興味を持ったときに、じぃが作ってくれたが、外で食べたことはないんだ。」


こういうの、夢だったんだ。聖川が珍しく上擦った声で笑うため、神宮寺は呆然と見つめてしまった。

世間を知らないというか、俗にまみれていないというか、とにかく、自分との違いに複雑さを感じたのだ。


その後、手を引かれていることに気付き、慌ててそれを振り払う。


聖川は気にしていない雰囲気で、ハンバーガーショップへと足を進めた。


背中を見て、少しほっとする。もしかしたら、自分の失敗を気遣ってくれたのかもしれない。


掴まれた手の感触だけは、しっかりと残っていた。



ハンバーガーをテイクアウトし、近所の公園のベンチで食べることにした。

まだ肌寒さは残るが天気は快晴だった。

数組のカップルや家族連れが歩いているが、静かで長閑な時間が流れる。

「どうだ?うまい?」


ハンバーガーをモグモグと咀嚼する聖川に聞くと、そのままこくりと頷いた。


「うむ。テリヤキにして正解だったな」


真面目な顔をしていうものだから、神宮寺は吹き出してしまう。

普段は和食を巧みなはし使いで食べている印象だったため、両手でハンバーガーを食べる聖川の姿は新鮮だった。


「聖川、頬にソースがついている」


「む?どこだ?」


「ここ、違う、逆だ」


神宮寺は聖川の頬に指を伸ばし、ソースを掬った。そのままそれを舐めとると、甘辛いテリヤキソースの味がした。


「ん。確かにうまいな」


「じ、神宮寺…」


目をぱちくりとさせ、聖川がこちらを見ている。
「ん?どうした。もう取れたぞ。お前が食べ物をつけるなんて、珍しいな」


聖川の様子を不思議に思いながら笑いかけると、聖川はありがとうと目を伏せて言った。


うん、けっこうイイ感じじゃないか?


普段のように、レディを喜ばせるようなエスコートは出来なかったが、聖川の知らない面を見れた。

神宮寺は満足げに青空を見上げた。







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