2 やってしまった! デート当日。予約していた店に聖川を連れて赴いたところ、予約日を1日間違っていたことが判明した。 既に店内は満員で、翌日にまた伺うということで、店を後にする。 神宮寺は聖川に恥ずかしいところを見せてしまったと、不貞腐れた表情で歩く。 「別にいいではないか。明日また来れば。」 聖川は無邪気に笑い、肩をすくめた。 「それはそうだが。こんな失態は初めてだ」 「そうなのか?しかし、お前も意外に抜けているのだな。」 聖川は面白そうに、唇を尖らす神宮寺の手を取った。 「今日はかしこまった食事などはせず、ゆっくりしよう。俺は、ハンバーガーというものを食べてみたい」 「えっ、お前食べたことないのか」 「前に興味を持ったときに、じぃが作ってくれたが、外で食べたことはないんだ。」 こういうの、夢だったんだ。聖川が珍しく上擦った声で笑うため、神宮寺は呆然と見つめてしまった。 世間を知らないというか、俗にまみれていないというか、とにかく、自分との違いに複雑さを感じたのだ。 その後、手を引かれていることに気付き、慌ててそれを振り払う。 聖川は気にしていない雰囲気で、ハンバーガーショップへと足を進めた。 背中を見て、少しほっとする。もしかしたら、自分の失敗を気遣ってくれたのかもしれない。 掴まれた手の感触だけは、しっかりと残っていた。 * ハンバーガーをテイクアウトし、近所の公園のベンチで食べることにした。 まだ肌寒さは残るが天気は快晴だった。 数組のカップルや家族連れが歩いているが、静かで長閑な時間が流れる。 「どうだ?うまい?」 ハンバーガーをモグモグと咀嚼する聖川に聞くと、そのままこくりと頷いた。 「うむ。テリヤキにして正解だったな」 真面目な顔をしていうものだから、神宮寺は吹き出してしまう。 普段は和食を巧みなはし使いで食べている印象だったため、両手でハンバーガーを食べる聖川の姿は新鮮だった。 「聖川、頬にソースがついている」 「む?どこだ?」 「ここ、違う、逆だ」 神宮寺は聖川の頬に指を伸ばし、ソースを掬った。そのままそれを舐めとると、甘辛いテリヤキソースの味がした。 「ん。確かにうまいな」 「じ、神宮寺…」 目をぱちくりとさせ、聖川がこちらを見ている。 「ん?どうした。もう取れたぞ。お前が食べ物をつけるなんて、珍しいな」 聖川の様子を不思議に思いながら笑いかけると、聖川はありがとうと目を伏せて言った。 うん、けっこうイイ感じじゃないか? 普段のように、レディを喜ばせるようなエスコートは出来なかったが、聖川の知らない面を見れた。 神宮寺は満足げに青空を見上げた。 → |