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翌日、聖川は雑誌の撮影の仕事に向かった。神宮寺も以前受けていたインタビューページもあり、ST☆RISHメンバーが毎号一人ずつ掲載されるコーナーだったようだ。

聖川は和服に身を包み、赴きある日本家屋で撮影を実施した。

慎ましく笑みを浮かべたり、真剣に見据えたり、思い悩んだり、乱れ涙したり。自分の中に存在する感情を意識しながら、体と表情で表現していく。


伝わるだろうか。誰も知らない、底に隠し持った、揺れ動く感情。

言葉では伝わらない。伝えられない。だから体で、声で、聖川は証明していく。

真実の断面を介間見せ、人間としての深淵を想像させることを意識して、体現していくのだ。


順調に撮影が進み、インタビューに入った。


ST☆RISHメンバーひとりひとりの印象を聞かれていき、最後に神宮寺のことを質問された。

『神宮寺レンさんのことをどう思っていますか?』

聖川は笑顔で言葉を紡いでいった。


そして、最後の質問となった。

『どのような恋愛をしたいと思っていますか?』


「恋愛…ですか?」


インタビュアの女性が目を輝かせ、頷く。


聖川は神宮寺を思い浮かべた。反射的に、あの幼い寝顔が過った。


「対等な関係、でしょうか」


『対等?』


不思議そうに聞き返され、聖川は頷いた。


「はい。どんな角度からでもいいから、対等な関係でありたいです。自分の性格は、面倒をみたい、甘えさせたい、頼られたい、と、相手に世話を焼くことが多いのですが、それが相手にとって重荷になることも知っています。」


『そうでしょうか?女性だったら、とても幸せなことだと思いますよ?』


インタビュアの言葉に聖川は小さく首を振る。


「だとしても、押し付けだと思います。本当に相手の望むことを、理解できるわけではないから。」


『聖川さんは優しいのですね。』


「いえ、全然。」

即座に否定し、不敵に微笑んだ。シャッター音がなり、フラッシュがちらついた。


「だから、その押し付けを相手に求めるんです。他の、俺に足りない部分を。俺にはない、柔軟さだったり、多様な視点だったり。」

『なるほど。バランスの取れた関係というところでしょうか。それは、理想のように思いますね』

「はい、おっしゃる通りです。相手にも求めているのだから、俺は全く優しくないですよ。」



聖川が柔らかく微笑むと、再びシャッター音が鳴り響く。


『ありがとうございました!』

インタビューが終了し、聖川は座敷から立ち上がった。暖かな藺草の香りが鼻腔を通り抜け、気持ち良い疲労感が身体に走った。





「ただいま」


「お帰り」


神宮寺が玄関先で出迎えてくれる。

「今日、撮影だったんだろ?どうだった?」


リビングで上着をかけていると、神宮寺が聞いてきた。口調は心なしか弾んでいる。


「楽しかったよ。日本家屋で和服を着た」

「あー、和服って感じだもんなあ、聖川は」


「持ってきてやるよ。この前の撮影よりは、うまくいった気がする」

「いいよ、俺が買うから。って、なんかデジャビュだな。」


神宮寺が肩をすくめ、笑う。聖川もつられて笑った。


やはりこんな日常が、いつまでも続けばよいと、心から願うのだった。

END




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