5 自分自身の神宮寺への気持ちの変化に戸惑うまま、時は過ぎていった。 互いの仕事が忙しくなり、神宮寺とゆっくり話す機会もない。 夕食もスタッフや仕事仲間に誘われたり、時間が深夜を回ってしまうため、一緒に食べられない日が続いた。 メールで今日も遅くなるという旨を伝えた後、聖川はため息をついた。 仕事が忙しいことはいいことだ。自己の成長も感じられる。 しかし……。 これ程すれ違いの生活が続くと、一体何のために自分は神宮寺と付き合っているのか、疑問になってくる。 アイドルになるという夢は譲れない。 神宮寺を愛しいという気持ちも本当だ。 しかし、今仕事に追われ、神宮寺を大切にしたいのに、余裕がない。 自分の未熟さ故に、神宮寺を傷つけるかもしれない。 もし、どちらかを選ばなくてはいけないとしたら、俺は。 「聖川さーん、本番です」 「はい!」 聖川はスタッフの呼び掛けに立ち上がり、控え室から本番スタジオに入った。 俺は、迷いなくアイドルへの夢を選ぶ。 こんな薄情な思考なのに、本当に神宮寺を愛していると言えるのだろうか。 司会者の質問に笑顔で答えながら、聖川は心中で自問した。 → |