3 午前中はダンスと歌のレッスンをST☆RISHメンバーで行い、午後は神宮寺とバラエティー番組の収録に向かった。 久しぶりに1日中神宮寺と一緒にいられて、心なしか浮かれている。 バラエティー番組は、観客もいるクイズ番組で、知識だけではなく体力や運も問われる様々な問題に、パートナーと協力していくものだ。 神宮寺はテレビで見たことがあると言っていたが、聖川は知らなかったため、事前に予習をした。 「それでは今日のゲストは…シャイニング事務所期待の星、ST☆RISHのメンバー、神宮寺レンさんと聖川真斗さんです!」 司会者の合図の後、大きな歓声を浴びてスタジオに入る。隣の神宮寺をチラリと見ると、余裕の笑みで返してくる。 大したやつだ。聖川は緊張で指先がピリピリとしていた。 簡単な挨拶と宣伝を済ませ、最初のクイズが始まった。 司会者が出題するクイズに聖川が答え、その回答時間を神宮寺がランニングマシーンで走ることで稼ぐ。 事前アンケートで答えた回答者の興味があることに関する質問だったため、順調に正解していった。 例えば、「聖川さんは料理が得意ということですが、料理のさしすせそをお答えください」だったり、「聖川さんが所属するシャイニング事務所で今年ミリオンヒットを出したグループを五つお答えください」などだ。 「それでは最終問題です!これまで全問正解ですが、神宮寺さん、大丈夫ですか」 司会者が神宮寺に振ると、歓声が沸き上がった。 「結構疲れますね、これ」 神宮寺は息を切らしながら、ランニングマシーン前部のバーに寄りかかった。 観客から頑張ってという呼び掛けに、笑顔で手を振っている。 「あと一問、頑張ってください!さあ、今回はそんな神宮寺さんに関する問題です!」 「はい!」 「マサト、頑張れよ」 「ああ」 「早乙女学園時代から同室で暮らし、今も近くで生活しているお二人なので、楽勝かもしれません。世間ではプレイボーイで通っている神宮寺さんですが、好みの女性のタイプは何でしょう?五つお答えください!」 一際大きな歓声と共に、神宮寺が走り出す。 聖川は頭が真っ白になった。好みの、タイプ?女性、女性−…。 「えーと、胸が大きな女性!」 ピンポン!正解のSEと一緒に、マサトらしくない発言に客席から笑いが起きる。しかし、聖川には客席を気にする余裕がない。 あと4つ…? 過去の記憶を総動員させ、かつ一般的に人気とされる女性のタイプをイメージする。 「えー、料理がうまい!」 ピンポン! 「優しい!ノリがいい!」 ピンポン!ブー! 「む…歌が好き!髪が長い!」 ブー!ブー! 必死で答えを絞り出すもむなしく、不正解を告げられる。 「おっと、聖川さん出ませんか?もう少しで時間です!」 「お母さん!」 答えた瞬間、回答時間終了を告げるSEが鳴った。会場は落胆の声が響く。 「すまない、神宮寺」 息切れしている神宮寺に謝ると、神宮寺はカラカラと笑う。 「ドンマイ、仕方ないさ。というかお前、最後お母さんて!」 会場がどっと沸く。 「すまない、なんとなく出てきて」 「はい、お二人ともお疲れ様です!正解は他に、セクシー、声がよい、誠実、天然、などがありました!」 「レン、これは正直答えも難しいぞ。セクシーな天然…まあいなくはないが」 「そう?なんかいっぱい答えなくちゃいけなくてさ〜」 「まあ、全てのレディが俺の好みだけどね」 神宮寺がウインクをすると、会場が黄色い歓声で包まれた。「お二人は女性の好みについてとか、お話したりしないですか?」 「そうですね…仕事の話が多いです。」 「真面目か!まあ…あと夕飯とかな」 「夕飯?」 司会者の問いに今度は聖川が答える。 「レンがたまに食べに来るんですよ。今度はその時にでも、女性の好みについて会話をしてみます。」 「真面目かよ!」 神宮寺の突っ込みに、会場からは笑いと歓声、半々くらいの音が沸き上がった。 クイズには外れてしまったが、場が盛り上がり聖川は安心した。 このあとも、聖川の天然に神宮寺が突っ込みを入れるようなスタンスで笑いを取り、収録は滞りなく終了することができた。 しかしー…。 女性の好みのタイプ。 聖川の胸には、何故か違和感が残ったままだった。 → |