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※聖川様と以外の絡みがあります。ご注意ください。


聖川との一件があった翌日、神宮寺はクラブハウスへ来ていた。

聖川は自分を憎からず、思っており、だけど抱けない、という。

なんとも勝手だと思ったが、そもそも何故自分は、抱いてくれるのか、なんて問いかけたのか。

そういう世界はあると知っているし、愛の形は様々だ。

しかし、自分はずっと女性が好きだったし、縁のない世界だと思っていた。

そこで、神宮寺は酒の力を借りて、男に抱かれることを試してみようと思ったのだ。


馬鹿げているとはわかっていたが、聖川は必要ないということを証明したかった。





「君、ひとり?」


サラリーマン風の男が声をかけてきた。普段つけているピアスを片方外してみただけで、効果があったようだ。

男は30代前半くらいに見えた。清潔感があり、二重瞼が印象的で、表情は優しげだ。


「ああ。おじさんは?」

「おじさん?ひどいな。まあ、君ぐらいの子にとっては、そうかな」

男は柔らかに笑いながら、神宮寺の膝を手で撫で付ける。瞳の奥は鋭く光っている。嫌悪感が走るが、神宮寺は愛想笑いを返した。


「退屈なんだ、特に今日は」

髪をかき分け、わざとピアスを見せる。男は一気に距離を縮めてきた。


「振られた?そんな訳ないか。すごく綺麗だよね。」

「そんなことないさ。振られた…そうかも。」


脳裏に聖川が過る。聖川は、本気の怒り顔だ。
でも、神宮寺はこうすることしかできない。聖川を忘れたいと思った。




「もったいないことする。殴ってやりたいな、そいつ」


「もういいんだ。なあ、おじさん……」


神宮寺も男の肩に腕を伸ばし、ねだるような視線を向けた。


男が生唾を飲み込む音がする。


「出ようか」

立ち上がる男に、黙って付いていく。
ちょろいな。神宮寺は胸のうちでほくそ笑んだ。




十代であることを告げても、男は怯まなかった。
ホテルの部屋に入った途端、いきなり唇を奪われた。男のざらついた舌でねっとりと口腔を舐められ、気色悪さに嗚咽しそうになる。

涙目になりながら我慢していると、後頭部を固定されたまま、ベッドに押し倒された。


聖川とキスした昨夜を思い出し、胸が鈍く痛んだ。


「ん……」


唇が離れ、男が何かを探し始めた。がさがさという音の後、男が取り出したものに、神宮寺は驚愕する。


「なっ、それ……」


「これで遊んであげるよ。」


男が荒い息で神宮寺にのし掛かる。男が手に持ったそれのスイッチを入れると、狂暴な音を立てて、激しく振動し始める。

バイブレータは極太だった。もし挿入でもされたら、まだ何も受け入れたことがない神宮寺のそこは、壊れてしまうだろう。


「いやだっ!や…!」


焦りと恐怖で暴れると、神宮寺の体男は押さえつけた。なおも抵抗すると、男に掴まれていたシャツから、鈕が弾けとんだ。


男が鈕に怯んだ瞬間に、神宮寺は部屋から逃げ出した。


「おい!待て!」


男の怒鳴り声が耳に響く。神宮寺ははだけた胸を隠しながら、ひたすら遠くへと逃げた。






「はぁ、はぁ…」


300メートルくらい走っただろうか。息切れしながら、駅まで向かおうとした途中、向かいから見覚えのある人影が歩いてくる。


「聖川…」


最悪な出会いだ。神宮寺は胸元を隠しながら舌打ちした。ついさっき、乱暴にあったことが一目でわかる様子だ。


「神宮寺、何をやってるんだ!」


聖川が声を張り上げる。初めて聖川の激昂を目にし、神宮寺は驚きを隠せない。


聖川は神宮寺の腕をぐいと掴み、力任せに引っ張る。


「帰るぞ」

「おい、痛いって!」

「うるさい!」

「念のため言うが、未遂だ」

「うるさい!」


聖川が力いっぱい引っ張るため、腕か軋んだ。しかし神宮寺は聖川のあまりの形相に、先刻受けたショックが紛れたことに気付いた。

既に辺りは真っ暗になっていた。
寮までの帰り道、神宮寺は大人しく腕の痛みを享受していた。







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