3 どうしてこんなことになった。 寮のベッドで、一応身体を起こした状態で、神宮寺は思った。 始業時間は8時半だっていうのに、聖川は6時くらいに起きて布団を干し始めたのだ。 窓から射し込む光に目が覚めてしまい、神宮寺はぼんやりと壁を見る。 クラスが違うことに安心していた神宮寺だったが、寮に入ると聖川がいた。同室だった。 前乗りしていた聖川は既に奥半分のエリアを取っており、畳まで敷いていた。 「同室だったのか。よろしくな」 無表情で言う聖川に、肩にかけていたボストンバッグがずり落ちたのが、昨日の放課後のこと。 「早く荷物を出したらどうだ?なんなら手伝うぞ」 区切られた部屋の神宮寺側は、まだ雑然としている。聖川はあまりそれが気に入らないようで声をかけた。 「勘弁してくれ…俺はまだ眠いんだ…」 「では、放課後だな。それほど多くないし、1日で終わるだろう」 布団を戻しながら聖川が息巻いた。 オカン…そんな単語か頭に浮かぶ。神宮寺はうんざりした。 冗談じゃない。やっと自由になれると思ったのに。 聖川は悪くはない。単に、善意で言っているだけだろう。しかし。 神宮寺はベッドから降り、聖川を睨み付けた。 「神宮寺?」 「これからずっと、寮生活が続くから言っておく。」 聖川が息を呑む。 随分と成長した。 今は視線が大体同じだ。 「俺に干渉するな。俺も、お前に早朝布団を干すな、なんて言わないから。放っておいてくれ」 語気を強めて言うと、聖川は小さく頷いた。 「わかった。神宮寺、お前……」 「なんだ?」 「いや。なんでもない」 変わったな。そう続けたかったのかもしれない。 だとしたら、俺も同じ気持ちだ。 神宮寺は自棄になって、再び布団に潜り込んだ。まだ十分に時間はある。 新鮮な空気と朝の光が入った部屋は、なかなか眠らせてくれなかった。 → |