未来の渇望
聖川を初めて見たのは、会社の入社式だった。
周囲がざわめく中、一人凛として背筋を伸ばして立つ様子に目を奪われたのだ。
少し愛想はないが、こいつは仕事が出来るだろうな、と偉そうに値踏みしていた。
名前と存在をはっきり認識したのは、その後の研修旅行。
気を抜いていたら、入社試験の頃から目をつけられていた人事部のおっさんに襲われかけた。偶然聖川に助けられたのだ。
面白がって他言するような男ではないとわかってはいたが、なんとなく気まずく、ますます距離を置くようになる。
同じ部に配属された時はまずいな、と思っていた。
何故か。
聖川と関係を持った今なら分かる。
かっちりと着込まれたスーツ。 固く引きますばれた唇。 意志の強い瞳と、色気を追加する泣きぼくろ。
神宮寺とは正反対に位置する真っ直ぐなその姿が、単純に好みだったのだ。
最初に声をかけて来たのは奴からだったが、誘ったのは自分だ。
快楽に弱い自分が清浄な奴を汚すことから、本能的に逃げていたのだろう。
結果的にこうなってしまった以上、自分はどうすればいいのだろうか。
聖川に、素直に思いのまま接していいのか。
のめり込み傷つく前に、距離を置いた方が良いのだろうか。
神宮寺の目下の悩みはそこであった。
と、気付くと家を出る時間まであと三十分程である。神宮寺はベッドから立ち上がり、洗面台に向かった。
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