2(Hijirikawa_side)

「なあ、神宮寺」


「んー、んぁ」


シーツに身を埋めながら、紅潮した目元にキスを落とした。


「何だか、機嫌悪くないか」


「なんで?」


固く立ち上がった胸の突起を指先で弄りながら問うと、神宮寺の瞳が少し不安げに揺れた。


「誘いかたが気に入らなかったか?」


「いや、そういうわけではない」


ぎゅ、と抱きしめ、肩にかぷりと噛みつく。


お前は安定を嫌うから。俺といっしょにいることで、つまらない思いをさせているのではないか。そんな、格好悪くて仕方ない感情が聖川を襲う。だからといって、自分を変えることは不可能だと諦めてもいるため、我ながらたちの悪い男だ。


「んん、聖川、ぁ」


「神宮寺…」


互いの昂りを擦りつけながら、快楽を求め合う。聖川は神宮寺とするセックスが好きだ。きっと、神宮寺も好きだと思う。聖川から誘うことはあまりないが、断られたこともない。


「なあ、入れたい」


耳をあまがみし、囁くと、神宮寺はこくりと頷き、指をぎゅっと握ってきた。


「聖川、好きだ」


切なげに眉をひそめ、神宮寺が呟く。


「俺もだ」


頭がぼんやりして、神宮寺の掠れた声と、色っぽい表情しか目に入らなくなる。こういうのが、夢中、と言うのかもしれない。


「ん、く……」


向かい合ってゆっくり結合を深める。聖川は神宮寺のナカが好きだ。もう何度入ったかわからないけれど、毎回その気持ちの良さに気を失いそうになる。


「聖川ぁ…」


「神宮寺……」


神宮寺の瞳に、涙の粒が浮かぶ。舌で拭うと、しょっぱい味がする。


「神宮寺、好きだよ」


腰をぐっと、推し進め、ぎゅうと締め付けられる感覚に酔いしれる。愛しい気持ちが溢れて、この腕の中の彼を守るためならなんでもできると、無敵の力を得たかのように、錯覚する。


「聖川……もう」


「うん……」


いっしょにいこう、そう呟きキスを落とすと、二人同時に絶頂を迎えた。

「なあ、神宮寺」


「ん?」


二人シャワーを浴びた後、神宮寺の体を拭いてやりながら、聖川は気になることを投げ掛けた。


「どうしてあんなこと、聞いたんだ?」


「あんなこと?」


「俺のピアノが、聞きたいと」


「んー」


神宮寺が指を顎にあて、理由を考える。きっと、本人も理由など意識していなかった。けれど、考えてくれている。聖川は、そんな神宮寺が好きだ。


「もしかして、また眠れない?」


何か不安にさせただろうか?聖川が、気になることの核心をついた。神宮寺は、合点がいったようにふわりと笑う。


「お前のほうが不安そうな顔」


ぷに、と頬に指をさされ、次の瞬間唇に噛みつかれる。


「神宮寺?」


「眠れてるよ、大丈夫」

お前とセックスしてるし、と茶化すので、ではピアノは?とさらに問いただせば。


「お前のピアノ、好きだから」


無邪気な顔で笑うから、ますます夢中になってしまいそうだ、聖川は思った。



End





 

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