出会い U



「初日から廊下に立たされるとか笑えねえ····」
「宗太が起きるの遅いから悪い」
「そうだそうだー!」
「いや広海は俺を起こせよ!!」


現在俺たち3人は遅刻の罰として廊下に立たされている。両手には水の入ったバケツを持って。
ちなみに、さすが昭和····と小さく呟いたら山田先生に愛の鉄槌を下された。馬鹿ほど痛い。


「なーこれいつまで立っとくの?」
「一時間目終わるまでかなあ」
「まじで?!」
「ていうかセンセーも特に考えてなさそうだよな」


絶望に耽る俺とは裏腹に、高見も広海も余裕の表情。これが勝者の余裕ってやつか、腹立たしい限りだ。···ん?勝者ってなんだ?よく分からんくなってきたぞ。こいつらなんなんだいったい。


「俺まだ1回も授業受けれてないんだけど···」
「俺も俺もー!」
「まあ俺も実質受けてないようなもんだけどね。授業全部寝てたし」
「お前ら·····」


こいつら学生として酷すぎるぞ。割と馬鹿にならない学費を払ってもらってきてるというのに!もっと意欲を持って学ぶべきだろう!

···でも俺より頭いいんだもんなあ······


「なんて世界だ」
「─────あ!やっぱり!前川だーッ!!」


──────...うん?気のせいか...今なんか名前呼ばれた気がするんだけど.....



「前川ーッ!!」



「····」
「まーえーかーわーッッ!!!」

「───うっせー名前呼ぶな下さい!!」


俺がそう叫んだ途端、俺と広海と高見の3人は、バケツを放り投げ一斉に走りだした。


「宗太敬語喋れてないじゃん」
「頭悪そうだったよ」


フロアの端からここまで届く声量。間違いない、アイツだ。花ノ下だ。
朝から廊下に立たされるわ宇宙人に追いかけられるわ散々だなほんと。


「え、ちょ、二人とも、はやくね!?」
「いや宗太遅すぎ」
「ほらほらもっと頑張れー」
「俺は標準、だッ!」


なんやかんや言いながらも、前を走る広海と高見との間はどんどん開けていく。


「え、...ちょ、どこ?!」


息を整えようと下を向いている間に、前を走っていた2人の姿を見失う。前には分かれ道。右か左か、クソ...こんなことならちゃんと校内地図覚えとくんだった...

そうこうしてるあいだにも、花ノ下のドタバタとうるさい足音がどんどん近づいてきている。


「よ、よし外に逃げよう····!」


くるりと方向を左に向け、大きく息を吸い走り出した。




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