春 U



────...どういうことなんだろうか


俺は目の前に佇む巨大な建物を力なく見上げた。
周りを見渡せば、男、男、男、360°全部男。

しかもその中にまるで女の子のような男が混ざっていたりして「このリップね、すごぉくいい感じなの」などとどこぞのJKのような会話をしているのである。まったくなにがどういいのか説明してもらいたいものである、いらないけど。


「もう無理帰りたい....」


昨日学校から帰ったらあと、机の上には死刑宣告ゲフンゲフン、俺の転入をしらせる置き手紙があった。

それから俺は急いで荷物をまとめて電車とバスとタクシーを乗り継ぎなんとかあの紙に書かれた住所の学校にやってきたというわけなのだが。

来て見てビックリ!
ここは俺のような庶民の底辺が暮らす学校とは違う、超絶エリートの皆様の通う超金持ち学園だったという訳だ。何故だ、そういうのは二次元限定の話じゃなかったのか。許せない!

...え?何故お前みたいな平凡がこんな所にって?

説明しよーう!(某ヒーローアニメナレーション風)俺の母さんは生粋のお嬢様でそのお兄さん、つまり俺のおじさんが全部手配したからこんなクソデカい金持ち校に入学することになったのだ!ワーイ!ヤッタネ!今日から僕もお金持ちだァ!


「ねぇーあいつ誰?」
「えっ?うわ、誰あれぇ」
「わかんなぁい、あんまりイケメンじゃないね」
「ていうかなんか1人でニヤついてない?」
「わかるぅ!」
「キモい...まあ僕達には関係ないね!」
「そうだねぇ」


悪かったな顔がそこまでよろしくなくて!でも別に見苦しい顔ってわけじゃないだろ!...え、大丈夫だよな...?

...と、というか。
あそこで俺のことを豚のように蔑んでいたあいつらは本当に男で、あのズボンの下には俺と同じブツがぶら下がってるの??

どこからどうみても女子高生だろ。
強いて違いをあげるならみんなズボンを履いている、髪の毛が短いことくらいじゃないか。
ロン毛もちらほらいるけどそいつらはもう論外でいい、きっと本当に性別が違うんだろう。


「...よし帰ろう!」
「いやいやお前何言ってんだ」


俺が立ち上がり来た道を引き返そうとしたら、後ろから声が聞こえた。驚いて後ろを振り向くとそこには気だるげな目で呆れたように俺を見るイケメンが立っていた。


「ふ、フーアーユー...」
「あ?...あー、俺は山田だ。今日からお前の担任になる山田センセーだ」
「山田...」


このいかつ...まではいかないとしても気持ちそっち系のイケメンな兄さんが....YAMADA....?


「うわ..山田先生めっちゃすき...」
「分かった、お前は変なやつだ」
「よくお分かりで。でも俺はただの平凡、しいてモブ山モブ男くらいですよ」
「それ、名前が山田の俺に言うか?」

ホントじゃん...!名前負け...いや顔負けじゃん!(?)
神は不公平だ。先生の方が俺よりも前川って顔をしている気がする。平凡の名前の定義に抗議を求める。ヤマダ イズ ノット ヘイボン。


「...つーか、先生にフーアーユーはねぇだろ、バカか」

むむむと唸る俺のおでこを指でこつんと叩くと、イケメンヤマダ先生は門の隣の扉を開いてよっこいしょと声を上げながら俺の前に並んだ。



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