「ただいまー」

今日も今日とて6時間の長い勤務を終えた学生の俺は、肩にかけていた重い鞄を玄関に放りげて家に入る。いつもなら「おかえり」と返ってくるのに何故か今日は返事がないことに気づいて首を捻った。

「どっかでかけてるっけ、おかしいな...俺何も聞いてなかったけどなあ」

不審に思いながらリビングのドアを開け中を見ると、そこには誰の姿もなく、部屋の真ん中のテーブルの上に1枚の紙が置いてあるだけだった。

「なんだこれ...置き手紙?」

俺はゆっくりとその乾いた紙を手に取った


《 宗太へ。


お父さんとお母さん、久しぶりに二人っきりになりたいから宗太が高校に行ってる3年間使って世界一周旅行に行ってくるね。
高校は私のお兄ちゃん、つまり貴方のおじちゃんが決めてくれて色々手続きもしてくれたから、後でお礼のメールしておいてねー。

ちなみに全寮制の高校だからこの手紙呼んだらすぐ荷物まとめてね。20日には家を出なきゃだから!

あともう一つ。行く高校は男子校だから!

住所は裏に書いてあるわ。山の中だから迷わないようにね。
そうそう、さっちゃんにはもう伝えてあるから安心してねー。じゃあ、頑張れよ少年!

PS.

帰ってきたら兄弟が増えてると思うわ

母より。 》


「...って、なんでやねん!!!」


思わず慣れない関西弁のツッコミをキレ良くお見舞してしまい、母からの手紙をぐしゃりと握りしめる。

なんて勝手な親なんだ。いや、元から身勝手なのは分かってたけどここまでだとは思ってなかったぞ。
…ていうかここどこだよこんな住所初めて見たわ!いや、この際どこにあるかなんてのはどうでもいい。そんなことより、だ。

そんなことより....

─────男 子 校 っ て な ん だ

今どきそんなものが存在していいのか、全寮制の男子校なんて需要があるのは腐のつく女子だけだぞ。

それに...高校で可愛い彼女を作り脱童貞を果たすと永遠の友人である中島くんとしたんだぞ!?
男しかいない高校。
つまり、俺は高校で童貞を卒業出来ない。
もう俺中島くんに顔見せできないよ。

しかもナチュラルに子作り宣言してんじゃねーよこの親は少しは恥じらいを持てや!!

次々と湧き上がる感情を抑えつけ、わなわなと震える両手を顔に当てしばらくじっとした後、俺、前川宗太は大きなため息をついた。


「───今日って19日じゃん...」



募るばかりの不安は、夜9時のお天気番組のお姉さん(天然ドジっ子属性)の可愛さで吹き飛ばされた。



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