春 ]U
親衛隊の存在意義。
一応その存在には『己の信愛する対象を見守り、学園生活をよりよく快適に過ごせるように全力でサポートする』みたいなどうも俺みたいなハンピには首を捻ることしか出来ないヘンテコな規律のようなモノがあるらしい。
が、どうやらそれは建前で···実際は親衛対象への過激な執着、過度な防衛による一般生徒への制裁活動など、ファンクラブと言うよりかは盲信的な信者の集い。
親衛隊作られた方もいい迷惑である。本当に。
そして極めつけには、隊内の“制裁“というのも名ばかりで、実際はそれらは陰湿ないじめや暴力行為と何ら変わりはない。
制裁と言うきれいな言葉──別にそこまで綺麗ではないと思うんだけど──で正当化しているだけで、これはただの嫉妬からくる八つ当たり。
そしてこれも、リスクのあまり大きくない同性が恋愛の対象だからこそ起きてしまう事件と言ってもいいだろうが───制裁の一つに『強姦』等というその名前だけでも胸糞の悪い手法で制裁を下すこともあるらしい。
俺はそれまで黙って先生の話を聞いていたが、流石に強姦という単語が先生の口から出たことに酷く驚いた。
「ご、強姦って!そんなの普通警察が動くんじゃないんですか?!」
「忘れたか?ここじゃ外の常識は通じない。つまり、···まあ、わかるだろ」
『自分にとって不都合なことは、金の力でどうにかするもんだ』
そんなこと、ドラマやアニメの中の話だと思ってた。いや、俺には金持ちの常識がわからないだけかもしれない。わかりたくもないのでノーセンキューだが。
···もし、加害者が退学にならないのなら、被害にあった生徒は自分をレイプした奴と一緒に残りの学園生活を送ることになる。
それは多分、今まで平凡に暮らしてきた俺には想像もできないほどに恐ろしいことなんだろう。
「まあつまりここは、クソみたいな世の中の、クソみたいな奴らにはお似合いのクソ学園ってことだ」
「···なるほど、なんとなく分かりました。まあ···何となくですけど」
俺の納得の言っていない顔を見たのだろう。
先生は眉を寄せ悲しそうな顔で一言俺に「すまん」と謝った。
恐らく先生もこの現状には腹を立てているのだろう。先生の手が力強く握りすぎて血が引いて白くなっている。
「いやいや!それに、先生が謝ることなんてひとつもないですし、あんまり思いつめないでください」
「···ああ、ありがとな」
「いえいえ!それより続き聞かせてください」
「おう。あとは説明することは···この学園の生徒会についてだな。ここの生徒会はこの学園において最重要機関と言ってもいい。行事の運営や生徒の管理、資金面でもこの生徒会が動かしてる」
「···え、ぜ、全部ですか?!」
いくら生徒会と言っても根本は一生徒と変わりはないだろうに···そんな大事なこと任せて許されるの??
俺の通ってた高校の生徒会なんてジャンケンで決めてたぞ。ちなみに負けたのは俺の隣の席の田中くんだった。
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