おはよう IV
「…ぅ、」
牙介は顔を手で覆い、隣に座る貴斗の肩に寄りかかった。
「え、なに」
「…多分、ほんとにひとめぼれした、と思う、」
──胸に巣食うモヤモヤは晴れた、晴れたのだがが、今度はすごく胸が痛い。
自分は近づくだけで悲鳴をあげられる様な、周りから恐れられる存在なのだ、普通とは程遠い、言うなれば異質な存在。
つまりは今日、自分は到底叶うはずのない、不毛とさえ呼ぶことをはばかられるような“恋”をしたということなのだ。
「なんかこれ、つらい」
貴斗は、めったに弱っている所を見せたがらない友人が自分の前で泣き言を零したことに少なからず驚いたが、一度ため息をつくと牙介の頭を優しく撫でた。
「…おれちゃんと、じゅぎょうでる、しゃべりかけれないけど、みるくらいは、できる」
「…おう、頑張れよー」
そう言って貴斗は、自分に寄りかかり肩を震わせる牙介の頭を、ただずっと撫で続けた。
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