はじまり V








「ゴホッ、は、はぁ?!あかん!アカンに決まっとるやん!!」

貴斗の提案に目を見開いた牙介。その横に座ってスマホを弄っていた流音が可愛らしい顔を歪めて鬼のような形相で貴斗を睨んだ。

しかし、貴斗が咄嗟に流音の口を自分の手で塞ぎ、下を向き黙り込んだ牙介に「どうだ?」と優しく聞いた。

「…」

「やりたくないなら、別にやらなくていいと思うぞ」

貴斗はもごもごと暴れる流音にデコピンをしながら、牙介の顔をのぞき込む。

「…山道、最近授業に来なくなった、」

牙介は、ポツリ、ポツリと話し始めた。

「…それだけじゃない、あんなに頑張ってた部活まで、今は行ってない」

────俺の好きな山道は、今はいない。いなくなった、


牙介は、爪が皮膚にくい込むほど固く握りしめた手を、より一層強く握りしめ、苦しそうに顔を歪ませた。


「俺が、山道を引きずり戻す」

「よしよく言った」

「んんッ?!、ぷ、はぁ、う、うそやろ!?やめときって!!もしこーちゃんになんかあったら!俺は許さんで!!」

貴斗の手から逃れた流音は、声を荒らげて怒りを顕にした。

「うっせぇなお前!彼氏はどうしたんだよ彼氏は!」

「ついさっき別れたわ!!」

なんでお前はそうなんだ!!と言って貴斗は流音の頭をシバいた。

「…流音、心配してくれて凄い嬉しい。でも、今回はやめれない」

そう言って牙介は貴斗のことを真っ直ぐと見て、バツが悪そうな顔で「何も変わらないかも、しれないけど、」とつけたした。

流音は、そんな牙介を見て悔しそうに顔を歪めた。流音は本当に牙介のことが心配なのだろう。それは、牙介も貴斗も痛いほど理解していた。

「…ぅう、はー…わかったわ。もう、なんも言わへん。…けど、」

「ちょっとでもこうちゃんが傷つくようなことがあったらすぐにやめてな、」と、心配そうに眉を寄せて言った流音に、牙介は、安心したように微笑み、「ありがとう」と返した。

「まあ、花ノ下は重度の面食いみたいだから、生徒会室周辺をウロウロしてたら勝手にアイツから話しかけてくるだろ」

「…ああ、明日、行ってみる」

「おう、…頑張れよ」











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