はじまり U
「…で、山道は今生徒会室に?」
「……多分。よく知らないけど、花ノ下が役員のことも落としたらしくて、大概昼は生徒会室にいるって、誰かが話してた」
「あーだから最近こっちの仕事が多いわけだ」
「それって、トリシメの仕事か?」
「ん?ああ、そうそう。」
トリシメ──これは通称で、正式名称は『生徒取締役員』と言う学園運営委員会の一つだ。この学園にあるトリシメ以外の重要な機関は生徒会執行部、風紀委員会、学園監査委員の3つで、この4つは総じてBIG4と呼ばれている。
トリシメの基本的な業務は、学園のお掃除。あっちのお掃除じゃなく、そっちのお掃除。
つまり、悪い事した不良に鉄拳を食らわせる委員会だ。他にもいろいろすることはあるらしいが、貴斗は機密事項だと言って詳しいことは牙介に教えてくれなかった。
「トリシメって、不良をぶっ飛ばす委員会だろ、なんで仕事が多くなるんだ?」
「なんでも花ノ下に惚れた役員共が全く仕事をしなくて書類やらなんやらが全く風紀流れないらしい。おかげで風紀の機能が停止しかけててな、チャンスだと思ってアホ猿共が悪さやらかすんだよ。」
「そう、なのか」
「おう、例えばトイレにトイレットペーパー詰まらせたりな。ほんとバカだよなこの学校の奴らって。」
そう言ってため息をつく貴斗に、牙介は複雑そうな顔をする。
「どうした?」
「いや、…あいつらが悪ってことは。山道も、そうなのかなって、」
「…さあな、流石にそこまでは俺にはわかんねぇ。最終的には、山道次第なんじゃねえの?」
貴斗はあからさまに落ち込む牙介の頭に手を置き、「すまんな、上手く言えなくて」と言ってまた何かを考えるような顔をした。
「なあ牙介、どうだ、いっそお前もあの軍団の仲間入りしてみんのはよ」
「…え?」
「攻めるなら内側から、ってことだよ」
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