はじめまして T






「えー、今日は転入生を紹介する。」

担任が教卓の前に立ち、そういった途端。目に見えてクラスがざわめきだし、イケメンなのか可愛いのか、などと男子校に有るまじき言葉が飛び交う。

牙介はざわめくクラスメイトを横目で見て、通の席に目を移す。通は前の席の生徒と楽しそうに何かを話していた。

「うるせぇぞお前ら!」

うるさくなった教室に溜息をついた先生が一喝して生徒を黙らせる。教室が静かになった事を確認した先生は、ドアに向かって「もう入ってきていいぞ」と声をかけた。

途端、ドアが勢い良く開いた。

「みんな!おはよう!!」

ソイツが姿を現した途端、教室中から落胆の声が上がる。理由は簡単、その転入生の養子がコイツらの理想のイケメンと可愛い、どちらも当てはまらない──というか、彼らの嫌いなほうの部類だったからだ。

「今日から皆と同じクラスになる花ノ下姫だ!!仲良くしてくれよな!!」

そう言った彼───花ノ下姫に、疎らな拍手が飛び交う。

どう見ても名前負けしているだろうと思った牙介は、もう一度花ノ下の格好を見た。

もじゃもじゃの髪の毛に瓶底メガネ、そのせいで顔は全く確認出来ない。唯一見える口は大きく開かれ聞くだけで不快になるほど大声で声を発している。

「あー、じゃあ、花ノ下は……山道の隣だな。」

先生が通の隣の空席を指さして花ノ下に呼びかける。すると教室に絶叫が巻き起こった。

そりゃそうだろう、なぜなら通はこのクラスの人気No.1。生徒会にも負けじ劣らずの人気ぶりを発しているのだ。そんな通の隣を、何処の馬の骨かもわからない宇宙人の様な男に受け渡すなんて、山道ファンからしたら許せないことなのだろう──実際この時、牙介も苛立っていた。




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