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その様子を、暫く見ていた杏だったが、背後に気配を感じ振り向くと、
琉紅を抱いたままの璃尾狐が立っていた。

「…杏ちゃん、もしかして【おこ】…ですか?」
「おこですかぁ?」

緊張感はありつつも、どこかのんきに声をかけてくる璃尾狐と琉紅の姿を見た杏は、
思わず深い溜め息をついた。

「まぁね…って、綾っちはもちろんだけど、皆にも怒ってるからね!
あの子、相当怖がってたでしょ!やりすぎ!!」
「まぁ、そこは…すみません。途中で楽しくなっちゃって…」
「ふぇぇ?!私はそんなに怖がらせてないよ?!」
「あぁうん…ごめん…琉紅ちゃんは、むしろお互いにアタフタしてたもんね…」

流石に、琉紅は怖がらせるという点では、お互いにあたふたしていたのを見ていた杏は、
猫の姿のまま璃尾狐に抱かれている琉紅の頭をなでた。

「とにかく、社に帰ります?私も、この生贄さん美味しくいただかないといけないので…」
「ちょっ?!えぇ?!璃尾狐ちゃん!!綾ちゃんとの演技、本気にしてたの?!
え?この抱っこ、もしかして逃さないように?!!」
「演技?はて、なんのことです?私は、本当はこわ〜い狸さんに道をゆずるために、
生贄を求めて、狸さんからちゃんと生贄もらいましたから…」
「だから、私生贄じゃないぃぃぃ!!」
「はいはい。二人共…私より激おこな亜梨馬様が待ち受ける社に、迷子を連れた、
そのこわ〜い狸さんこと、ウチの問題児が差し掛かってるんだから、合流するよ?」
『は〜い』
「怒りの余り、領地一面凍らないといいですが…」
「怖いこと言わないで璃尾ちゃん…」

璃尾狐と琉紅を引率するように、杏は先程綾子達が通った道を進んでいった。



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