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しばらく道なりに歩いていくと、猫の鳴き声が聞こえ始めた。
突然のことで、ビクッと体を震わせた少女は、恐怖で立ち止まると、
数メートル先に、白い猫が道の真中にいて、じっとこちらを見つめている。

「猫…さん?」

少女がゆっくりと近づくと、少女をじっと見つめたまま、まるで少女を呼ぶかのように鳴く猫に、
少女が少しずつ緊張を解きながら近づくと、猫に触れられるほどの距離まで来た瞬間、
今まで見えていなかった猫の尻尾がゆらり揺れ、初めて見えたその尻尾は、きれいな二又に別れていた。

「?!!!」

ただじっと見て鳴く猫に、狐の少女は恐怖からか、目に涙を溜めながら、その場で立ち止まって動けなくなってしまった。


猫は、琉紅が変化したもので、脅かすだけの目的だったので、
猫の姿に戻ってただけだったが、あまりの少女の驚きように、猫の変化を解くわけにもいかず、
実はどうしたらいいのかわからず、困ってオロオロと鳴いていた。

(どうしようぅぅぅ!!すごい驚かせちゃってた!!泣きそうだよぉあの子…!!
絶対、悪い子じゃないよこの子!!どうしよう…奥に誘導とかできないよぉ!!!)

「にゃ…あy…」

思わず、猫の鳴き声と同時に、助けてもらおうと、多分近くにいるであろう
綾子の名前を呼びそうになった琉紅だったが、煙とともに綾子が琉紅の側に急に現れ、猫の琉紅を抱き上げた。

「?!」
「あ…あなたは…!」

一瞬急に抱き上げられたことと、知らぬ姿の人だったことで、琉紅もまた混乱して声を出しかけたが、
匂いと気配、そして言葉を発しないように、喉元をうまく撫でる仕草で、綾子だと一瞬で理解した琉紅は、
思わず助かったと、ゴロゴロと喉を鳴らした。


また、少女もまた突然のことで驚いてばかりいたが、迷っているときに出会い、
言葉を交わすわけでも、顔を見たわけでもないが、唯一この空間で知り合った者(綾子)の姿を見て、
ホッとして再度泣きそうになるのを我慢していた。

仮面をつけて、相変わらず綾子は表情が読めなかったが、琉紅を抱き上げたまま、
今度はその場から左の方向に向かって指を指した。

(え?綾ちゃん?次あっちなの??)

ある程度の配置は、先程杏から指示があったが、細かくどう脅かすかまでは各自に任されていたため、
琉紅も次が何処で誰が来るかわからず、またなぜか、綾子が琉紅を抱き上げたまま、
少女の後ろを歩き始めたので、ただなすがまま、綾子に抱かれて先を歩く少女の背中を見ていた。

(ほぇぇぇぇ!!この子についてくの?!!どこにつれてかれるのぉぉぉ?!)

ここが、普段自分が生活している結界内というのを忘れているのかと思うほど、
綾子の腕の中の琉紅も少女と同じくらい混乱をしていた。



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