2



不思議な猫、ミリィとの“出会い”

この出会いをキッカケに、様々な運命が動いて行く――――――







Ep.2 星空








『それじゃあ、順を追って説明するわね』



先程の戦闘でボロボロになった筈の教会があっという間に元の姿形へと戻っていく
これも、ミリィが言う魔導士?の力なのかな…?


『改めて自己紹介をするわ。私はミリィ。あなたに頼みがあって魔界から人間界にやって来たの』

「に、人間界??」

『あなた達人間の住む世界よ』


魔界とか人間界とか、そういうのは漫画やアニメで見て聞いたことはあった
でも、まさか本当にあるなんて――…



『まず、これを見てちょうだい』

「なにこれ…?…宝石?」



ミリィが見せて来たのは綺麗な星の形をした宝石だった


『これはさっきのレグルス――あのライオンのお化けの本当の姿よ』

「えぇ!!?」


これが、あのライオンなの?
何度も弄くり回して確かめるけど、ただの石にしか見えない


『これは“フィクシドスター”と言って、強大な魔力を秘めた宝石なの。その名の通り、ひとつひとつが12星座を構成する星の名前を持っているわ』


フィクシドスターは確か日本語で“恒星”だった筈
と、なると…さっきのレグルスは獅子座ってことになるのかな?


『フィクシドスターは強い力を持っているけど決して害のあるものじゃない。けど…悪用すると、とんでもないことになる。
その事を危惧した者達がフィクシドスターを封印したの』


ミリィは翳りがある表情で続けた


『だけど…誰かがこの封印を解いてしまった。封印が解かれたフィクシドスターは一斉に散らばってしまったの…よりによって人間界に』


確かに、人間が沢山いる所であんなお化けが現れたらパニックになっちゃうもんね
それは大変かも…


『そこで、あなたの力が必要なの』

「わ、私の??」

『梅流、さっきのローズクォーツを出して』

「えっと…これのこと?」


ミリィにさっきのハート型のチャームを差し出す


『回収!』


ミリィがそう言うと星の宝石は光となってチャームに吸い込まれて行った


『っと、こんな感じで回収して封印するの。でも、このローズクォーツはあなたしか扱うことが出来ない』

「どうして私が選ばれたの?えっと、こう言っちゃなんだけど、私、あなたの助けになれるか解らないし…」


運動もそんなに得意な方じゃない
それに、さっきみたいなお化けと戦うなんて…!


『大丈夫よ、梅流。だって、あなたは“妖狐瑪瑠”の生まれ変わりなんだもの』


そう言ってミリィは微笑んだ


『妖狐瑪瑠はその昔、フィクシドスターを封印した者の1人よ。誰よりも強い魔力と妖力…そして、神力を持っていたわ』

「そ、そんなの初聞きだよ〜〜!?」


だって、お父さんもお母さんも、普通の人間だったし!?
私の前世がそんなすごい人だったなんて聞いた事なかった



『とにかくあなたの実力はさっきも見た通り、本物よ。まさしく妖狐瑪瑠の生き写しだわ!』


そう言ってミリィは喜んだけど…なんだか実感が湧かない
確かになんとなく懐かしい感じはしたけども…


『だから安心して、梅流。それに、魔導士はあなた1人じゃないのよ』

「私以外にも同じような人がいるの?」

『そうよ。封印をした魔導士は瑪瑠を入れて8人の聖女…みんな強い力をもっていたけど瑪瑠はズバ抜けて凄かったわ』


そ、そんなに凄いんだ…私の前世?って…


「難しいかも知れないけど…私で、力になれるなら…」


困ってる人がいるのは、放っておけない
私に出来ることなら力になってあげたい…

ミリィはパァッと表情を明るくすると私の胸に飛び込んで来た



『ありがとう、梅流!あなたは最高のパートナーよ!』

「あ、あははは…」


ミリィを腕に抱いて、ひとまずは家に帰ることにした
えっと、うちって猫飼えたかな…??







*************************







外はすっかり暗くなってしまっていた
夕飯時のせいか、いつもは人の賑わう商店街も人っ子一人歩いていない



「…ねぇ、ミリィ」

『小声にならなくても大丈夫よ。心の中で念じれば声に出さずとも会話は出来るから』


そ、そうなんだ…
なんだか便利だなぁ


(えっと、…ひとつ聞きたいんだけど)

『なぁに?』

(私以外にも、その…魔導士っているんだよね?どこにいるか、とか誰が魔導士かっていうのは解らないのかな?)

『う〜ん…ごめんなさい。全部の子はちょっと解らないわね』

(全部ってことは…多少は解るのかな?)

『私たちは自分のパートナーになる子の魔力しか感知出来ないの』

(そうなんだ…)


という事は、私以外にも他にパートナーとなる魔導士の子がいるってこと、かな?
どんな子かなぁ?聖女って言ってたし女の子だと思う
仲良くなれたらいいな…


そんな事を考えながらぼんやりと歩いていた時だった




「――――キャッ!!?」

『梅流!?』


暗くて足場に階段があるなんて気付かなかった
思いっきり足を踏み外して、体勢を崩して――――


衝撃に備え、ギュッと目を瞑った
うぅ、きっと物凄く痛いだろうなぁ…




――――…あ、れ?


いつまで待っても衝撃が来ない
それどころか、柔らかい感触が身体を包んでいるような…?


恐る恐る目を開ける
暗闇の中、視界に入って来たのは1人の男の子だった




「――――大丈夫?」


そう言って柔和に微笑んだのは――――南野秀一くんだった
一気に自分の顔が赤くなるのが解った
い、今が夜で本当に良かった…!昼間だったら真っ赤になってるのバレちゃうから…!


「あ、ああああありがとう、南野くん!!」

「どういたしまして。こんな時間に女の子の1人歩きは危ないよ」


ど、どうしよう!!?
心臓がバクバク言ってて、上手く言葉にできないっていうか…!!



「家まで送っていくよ」

「えぇ!!?そ、そんな、これ以上南野くんに迷惑かけられないよ…!」

「迷惑だなんて思ってないよ。ほら、夜は危険だから――ね?」


そう言って南野くんは私に手を差し出した
恐る恐るその手を取る
こんな所、クラスの女の子に見られたら大変かも…


「猫、飼ってるの?」

「え!?あ、あの、この子は今日拾ったっていうか…!」

「捨て猫だったの?優しいね、亜門さん」

「そ、そんなことないよ…!」


どもっちゃって上手く言葉が出て来ない
ミリィはミリィで『わたしはお邪魔虫みたいね』って言って寝た振りしてるし…
気をつかってくれてる…のかな?



「亜門さんの家ってどの辺かな?」

「あ、えっと、ここを真っ直ぐ行ってすぐです」

「へぇ、オレもこの近くに住んでるんだ」

「あ…そう、なんだ…それじゃあ、どこかですれ違ったりしてたのかも知れないね」


まさかご近所さんだったなんて…!!
どうしよう、すごく嬉しいかも…

ミリィには悪いけど…この時間がずっと続けばいいのにってそう思っちゃった




「あ、ここで大丈夫!」

「そう?気をつけてね」

「うん!今日はありがとう、南野くん!」

「気にしないでいいよ。…それじゃ、また明日」




そう言って、南野くんは去って行った


なんだか今日は、ドッと疲れる1日だった気がする…
魔導士に変身して、戦って、お手伝いをすることになって…

南野くんに、送ってもらって…



まだ胸がドキドキしてる

必然の出会いと、偶然の出会い

その二つが交錯する



いくつもの出会いがきっとこの先に待ち受けてるだろう
それが戦いなのか、仲間となのかはわからない

――――でも


“やる”と決めたからには――頑張らなくちゃ!





空を見上げると、満天の星空が広がっていた――――







- 3 -


[*Prev] | [Next*]
*List*


Home


「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -