5-2




“なつ”…?
確か海里ちゃんには“笹森夏香”ちゃんっていうお友達がいた筈――…

ってことは、チャームを持ってるのはその子で、海里ちゃんはチャームを持っていないってこと!?
それどころか、私の読み大ハズレってことーー!!?
い、いや、確かになつちゃんとは直接の面識はないけど…
でも、お互いに海里ちゃんを通して存在を知っている筈だし、赤の他人って訳じゃないし…
魔導士の発見と微妙な読み違いに頭がこんがらがる
その時、不意に誰かに声をかけられた



「――よぉ、榊城海里」


「し、慎人!?」


海里ちゃんの顔が一気に赤くなる
初めて見る男の子だった
私は慌てて会釈をすると、男の子も同じように頭を下げた


「はじめまして、海里ちゃんの友達の亜門梅流って言います」

「あ、御丁寧にどうも…俺は片橋慎人です」


慎人くんっていうんだ
礼儀正しい人だなぁ…
チラッと海里ちゃんを見るとどこかそわそわしている
あ…なんとなく解っちゃったかも…
私はこっそり海里ちゃんに耳打ちした


「わたし、お邪魔だったかな?」

「そ、そそそそそんなことないよ!!」


うんうん、私も海里ちゃんの気持ちよくわかるなぁ…
恋をするって、いいよね
他の人の恋も応援したくなっちゃう…

そう思っていた時だった
ミリィから通信が入った


『大変よ、梅流!近くにフィクシドスターがいるわ!』

(えぇ!?)


その直後に閉鎖空間が発生する
周りの人たちが、石のように固まり、動かなくなってしまう
――私と、海里ちゃんを除いて…


「え…!?な、なんなのこれ…!?慎人?慎人!!」


海里ちゃんが必死に呼びかけるけど、慎人くんには届かない
その時、地面が僅かに盛り上がるのを感じた



「海里ちゃん!」


私は咄嗟に海里ちゃんを庇って、その場から離れた
地面が裂け、中から大きな3つ頭の山羊が現れる


「きゃあああああああっ!!?」


海里ちゃんを後ろに庇い、ローズクォーツを取り出した



「エネルゲイア・ローズクォーツ!!」



桃色の光に目を細める海里ちゃん
何事かと思われるだろうけど…説明はあと!


『あれは、アルゲディのフィクシドスターよ!気をつけて、あれは物体を石に変える力を持っているわ!』

「い、石!?」


ちょっと厄介かも…
でも、ここで怯んでちゃいけない!


「セント・リングアロー!!」


光の矢をアルゲディへと放つ
3つの頭にそれぞれヒットし、矢が刺さった箇所から黒い煙が上がる
もがいている内に、アルゲディは赤い光線を放った

それは真っ直ぐに海里ちゃんへと向かっていく…!


「きゃああああっ!!」

「海里ちゃん!!」



その時だった
白い光が現れ、赤い光線が弾かれる
海里ちゃんの目の前には、オレンジ色の小さなイルカがいた


『間に合った…。はじめまして、海里。私はカルサイト。カルアって呼んでね』

「い、イルカが喋ってる!?」

『私はあなたの“使い魔”としてここに来た。さぁ、海里。あなたも瑪瑠と共に戦うのよ』


そう言ってカルアは海里ちゃんに水色のチャームを手渡した


『それを掲げて“エネルゲイア・トルマリン”って叫んでね。そうすれば、あなたは彼を救うことが出来るのよ』

「慎人を…助けられるの…?」

『彼だけじゃないわ。この世界の人々を、よ』


海里ちゃんが私のほうを見る
そして意を決したように頷いた


「きっと、心のどこかで――私、あなたを待っていたのかも知れない…」





「「エネルゲイア・トルマリン!!」」




水色の光が身体を覆う
制服は光となって消え、代わりに光のベールが身体を纏う
順に魔導服を生成する


光が去り、ゆっくりと瞳を開ける




「第五魔導士“妖兎海里”――あなたの為に戦います」


海里は、そう言ってにっこりと微笑んだ



「行こう、海里!」

「うん!」


バッと2人で飛び上がる
アルゲディの光線を空中で避け、間合いを詰める
私は前方に、海里は後方に狙いを定めた



「セント・リングアロー!!」

「スカイ・トルネード!!」







矢が刺さった瞬間、大きな竜巻がアルゲディを巻き込んで行く
海里の操る風に翻弄され、そのまま地面へと叩き付けられた
そして、アルゲディは光となって消え、後には星形の宝石が残った


閉鎖空間は壊れ、いつもの町並みへと戻る



「あれ…?海里…?」


慎人くんがキョロキョロと辺りを見回す


「先に帰ったかな?…でも――」




「一瞬だけ…アイツが泣いてるのを、見た気がする…」








私たちは物陰に隠れてその様子を見ていた



「でも、ビックリした…私に、あんな力があったなんて…」

「うん…私も最初はビックリした。でも…」


互いに目配せして、頷き合う


「私に出来ることなら、カルア達のお手伝いがしたい…!」

『海里…!ありがとう、海里!』


カルアが海里ちゃんに抱きつく


「あ、そう言えば…なつちゃんも同じようなチャームを持っていたって…」

『うん、そうだよ。なつもあなた達と同じ魔導士なんだから!』

「「え…えええ〜〜〜〜!!?」」




とりあえず…残りの魔導士はあと2人、になるのかな?
その前になつちゃんと合流しないと…!!



慌ただしく駈けて行く私は、背後の気配に気付くことはなかった…





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