第四話-2





麓「これを・・・お前たちに」


麓が奥から木箱を持ってくる
無駄な装飾も成されていない只の木箱にしか見えないそれの蓋を開けると、八つの石が入っていた
それぞれが色とりどりの輝きを発している


なつ「わっ、すごーい」

海里「綺麗ですね」

杏「…で、これをどうするの?」


杏の問いに麓は小さく頷いてから話し始めた


麓「これは、“護石(まもりいし)”と言って、八つの万物の力を秘めた石だ。八岐大蛇との戦いに役に立つだろうと思ってな…」

璃尾狐「確かに…凄まじい気を感じますね」

瑪瑠「どうして、そんな石がここに…?」

麓「…蔵馬が、かつて盗んだ――いや、“取り返した”美術品だ。もしもの時の為に、この地下で力を蓄えておいた。護石は持ち主と"武器"を選ぶと言われている」


麓がそう言った途端、護石の輝きが更に強まった
光に包まれたまま、木箱から離れ宙に浮く

そのまま、それぞれ8人の元へと向かう



亜梨馬「…石が、主人を選ぶとはな」
―――亜梨馬の元へ来たのは紫の輝きの『紫水晶(アメジスト)』
漆黒に近い深い紫は、光を覆う闇の力


杏「これからよろしくね」
―――杏の元へ来たのは青い輝きの『青石(サファイア)』
神秘さを感じさせる透明な青は、水の力を持つ


崇樹「なんだか安心するなぁ、貴方を見ていると」
―――崇樹の元へ来たのは緑の輝きの『翠石(エメラルド)』
安らぎを与える緑は、大地を覆う樹木の力


海里「見せて下さい、あなたの力」
―――海里の元へ来たのは水色の輝きの『藍石(アクアマリン)』
広大な空を彷彿とさせる水色は、風を司る


なつ「一緒にがんばろう?」
―――なつの元へ来たのは黄色の輝きの『黄石(トパーズ)』
鋭い輝きを放つ黄は、雷の力を持つ


璃尾狐「なかなか、強情そうですね…あなたも」
―――璃尾狐の元へ来たのは橙の輝きの『黄水晶(シトリン)』
人工物独特の美しさにも似た橙は、鋼の力


琉紅「私とは…対照的な感じだね」
―――琉紅の元へ来たのは赤の輝きの『紅石(ルビー)』
燃え盛るような強い赤は、炎を司る


瑪瑠「あったかい…不思議な光ね」
―――そして、瑪瑠の元へ来たのは桃色の輝きの『紅水晶(ローズクォーツ)』 
優しさと、祈りと願いを象徴するかのような桃色は、聖の力を宿す



護石が、それぞれの主人を選ぶ
まるで意志を持ったように輝きをチカチカと瞬かせる



麓「さて…自分の護石が手に入ったところで、お前たちにはまだ渡す物がある。護石があっても、それだけじゃ力を発揮できない」

琉紅「…と、いいますと?」

麓「護石の力を最大限に引き出す媒介が必要になる。…それが、こいつらだ」


傍らに立てかけてあったあらゆる武器が護石と同じような輝きを放つ
それぞれが、護石に連動するかのように鈍く光る


瑪瑠「これも…蔵馬が?」

麓「ああ。…八岐大蛇の『呪』の力に対抗出来る武器だ。だが、これも護石同様、ちょっとやそっとじゃ操れないが…お前等なら、大丈夫だ」


護石が主人を武器へと誘う
主人が近づくにつれ、その輝きは一層強い物となった



亜梨馬の武器は、刀
一説によれば鉄をも軽々と斬る事が出来るという

杏の武器は、杖
様々な装飾が施されたそれは、強大な魔力を秘める

崇樹の武器は、弓矢
矢は金剛石でつくられ、弦はユニコーンの尾で作られている

海里の武器は、レイピア
リヴァイアサンの牙を削って作られた刃はそう簡単に折れる事は無い

なつの武器は、ダガー
オリハルコン製のそれは、小柄ながらも刃こぼれひとつしない

璃尾狐の武器は、斧
ダークマターも混じった巨大な斧は、容易に操れるものではない

琉紅の武器は、槍
飛龍の牙と鱗を使ったそれは、上空からの攻撃に強い



そして、瑪瑠の武器は、虹色の輝きを持つ羽衣
あらゆる聖獣の毛皮にて作られた羽衣は、どのような邪気も寄せ付けない


麓「その武器と護石が連動して、初めて本来の力を発揮する」

崇樹「へぇ〜この武器だけでも充分強そうですけどね」

海里「そこに万物の力が加わるって訳ですね」

瑪瑠「でも…麓兄、普通の私たちの力じゃ、太刀打ちできないの?瑪瑠の狐火とか…」


瑪瑠がそう言うと、麓は渋りながら口を開いた










麓「…お前たちの本来の力は、使えないよ。八岐大蛇によって、封じられてしまったから」






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