弐 少女




今日の1限目は体育だ



なるべく早めに着替えておかないと、色々と大変だ


特に今は夏で、体育の授業は専ら水泳

通常の体操服より、水着に着替えるほうが面倒で時間がかかるので余計急がなければならなかった





黒いランドセルを背負ったこの少年の名前は“碧”


碧は、普通の人間ではなく狐の妖怪・妖狐の血を引く者だった





身体能力も極めて高く、先程から小学生とは思えない速さで走っているが息ひとつ乱れていない





今日は少し寝坊してしまった


目覚時計の電池が切れていたのだ

(家に帰ったら、電池替えなきゃな・・・・)

そんな事を考えていた時だった






「もしもー――し!!!」




後方から声が聞こえた

何事かと思い立ち止まると、1人の少女が駆け寄って来た





夕闇のような紫色の長い髪に、それを止める青いヘアピン

そして、吊り上がった大きな瞳が印象的だった



学生服を纏っているが、不思議なことにその学生服は長袖のブレザーだった


見ているこっちまで暑くなりそうな恰好に軽い目眩に似たような感覚を覚えながら、碧は少女の用件を待った



「なに?」

「ねぇねぇ!君さ、ここの場所知ってるかな!?」
そう言って少女は小さなメモを碧に手渡す


「・・・・ああ、ここなら知ってるよ」

「本当!?どこどこ!?」


少女の大きな瞳が開かれる


「ここ、オレの通ってる小学校なんだ」

「へぇ、そうなの?じゃあさ、案内してよ!」

「良いけど・・・・走るよ?オレ急いでるし」

「あはっ!構わないわ!体力には自信があるから」


碧は、ふーん、と一言だけ洩らすと少女のほうを見ずに走り出した


後方から少女のものと思われる足音が聞こえて来る









少女は、走る碧を見つめながら不敵に微笑んだ








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