序 古城
その城には、2人の男女が暮らしていた
自由を渇望する少年と、獄中で死する事を望む少女
少年は、この城から出たいと少女に告げた
しかし少女はそれを許さなかった
『外の世界は汚れ切っている』
『ここで一生を終えるほうが幸せに決まっている』
少女はそう言って少年を諭そうとする
だが、少年は少女に同調しようとしなかった
『お前は外の世界を恐れているだけだ』
『現実から逃げているだけだ』
今度は、少年が少女を諭そうとした
少女は違うと反論した
『逃げているのはお前のほうだ』と少年に告げる
『外の世界に幻想を抱いているだけだ』
少年も、負けじと反論する
『お前みたいに、内の世界に篭って妄想に逃げるのは容易い。だが、時には外部からの現実を受け止めなければならない』
一歩も退かぬ口論が続く
そして、どちらからともなく狂気を爆発させた
古い城の中に、2人の男女はもういなかった
遺されたのは、血塗れた二つの骸のみ
――――外の世界の見たくない“現実”を綺麗事だらけの“幻想”に置き換え、身も心も汚していくべきか
内の世界の、自分に都合の良い“妄想”に逃げて、“現実”を“汚れた世界”と称し、殻から出ないまま一生を終えるべきか
貴方はどう思いますか?―――――
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