しばらく、各々の攻防戦が続いた
南の結界の端に辿り着いた紅光が双刀に霊気を込める
北側では、琉那が拳に霊気を留める
東側では、鳳凰が憑依し、髪の伸びた丁がその手を翳す
西側では、アストを呼び戻した月雨が彼女の手にその手を添える
四人の背後に残り少ない影が迫る
そして――――
「――――はッッ!!!」
「霊光弾!!!」
「炎刀烈風!!!」
「デルタ・リブラ!!!」
ガラスが割れるようなけたたましい音が響く
紅光の推理通り、結界が消えたと同時に影もその場で全て消滅した
後に残った水跡すらも綺麗に無くなる
フラフラと境内に桂が現れるが、その表情には生気が無かった
「おい、桂――・・・!!」
ふらつく桂を紅光が受け止める
桂は青褪めた表情でポツリポツリと、これまでの経緯を語り出した
「ごめん・・・ごめんな、本当に・・・オレの妹のせい、で――」
拳を強く握り、血が滲む
固く閉じた瞳から涙が零れ、落ちた
「これも――華菜の能力なんだ」
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夜寝る前、ベッドの中で今日の出来事を思い返す
夕闇の中、不思議な少女が言った言葉
(――私、あなたのこと好きになっちゃった)
それが本当か嘘かは解らない
あの後、家に帰ってから華菜の言葉ばかりが頭の中をぐるぐると回っている
決して彼女が好きだから、好意を抱いているからではない
ただ、“何故”“どうして”
告白を疑問視する感情ばかり湧いてくる
思えば、何故彼女は碧にやたらと纏わりついてくるのか
それすらも理由はわからずじまいなのだ
のそりと寝返りを打ちながら小さく舌打ちをする
「なんなんだよ、アイツ・・・」
疲れている筈なのに、碧はなかなか寝付く事が出来なかった
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そして、もう二人――寝付けない少年と少女がいた
赤髪の少女は信じられないと言った表情で自分の両手のひらを見つめる
「な、にこれ・・・」
両手の向こうの景色が――透けて、見えている
――――“世界”の決断は、もう始まっていたのだ
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