壱拾 一目




“神様”として生きる事を決めた少女
その少女を止めたいと願う少年――――



今、運命の歯車が回り出す――――――――








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「とりあえず…華菜のことはまた明日考えよう。二人とも、もう遅いし…」

「今更、そんなことで心配しないと思うけどな…」


華菜はあの後、紅い目を称えたまま、教室を後にした
後を追おうかと駆け出した所を寵に止められ、現在に至る
華菜が“神様”ならば、子供だけの独断で動く訳にはいかない
碧は納得のいかない様子だったが、寵に宥められ、渋々と家路へとついたのだった





――――同じ頃、紅光達も桂から華菜のことを聞いていた
彼女と自分は、この世界にいるべきではないと
この世界にいると…皆に迷惑がかかると


「きっと…華菜が、一番傷つく…オレはそんな結末、望んでいない…!」


今の情報薄の紅光達には、どうすることも出来ない
――まずは、情報をもっと集めなくては――――


紅光達やその両親達の実力なら華菜を抑制することは容易いことだろう
だが、その判断は本当に良い判断だろうか?
抑制したその先に待つものは…?


それが今の彼らには解らない

なんとかしてバラバラになっているピースを組み立てなければならない


神様

魔女

世界…



この三つが繋がりそうで繋がらない
これらは余りにも、大きすぎる材料だった


紅光も碧達と同様、この問題を明日へと持ち越すことにした
決して警戒は解かないようにと、そう釘を刺して












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「…あ、兄さん」

「碧」


家の近くで碧と紅光は鉢合わせした
互いに同じ問題を抱えていることを知らずにいつものように世間話や今日有った他愛無い出来事を話す


「兄さん、今日なんか元気ないけど…大丈夫?」

「え…?いや、なんでも――――」



その時だった
あの得体の知れない奇妙な気配が二人を襲った

その気配は――――彼らの家路へと続いていた



「「…母さんっ!!!」」



家には彼らの母親がいる
二人は急いで家へと向かった――――――…







バン!と勢い良く扉を開ける
息を切らしながら母が待つであろうリビングへと急いだ
そこにいたのは――――





「あ、おかえり二人とも〜」

「お、お邪魔してます…!」

「…ます」



母と、見知らぬ少年少女だった
少女のほうは碧と同い年くらいに見える
母親――梅流はにこにこと彼らを出迎えてくれた



「母、さん…?」

「えっと…どちらさまですか…?」

「あ、紹介するね!華燐ちゃんと、弟の杢火くん!今日事情があって泊まってもらうから、二人とも仲良くしてね♪」



恐縮しながら頭を下げる姉・華燐と無表情で頭を下げる弟・杢火
その呑気な光景に碧と紅光はその場にへたり込んだ



――――だが、やはりあの気配は消えていない



「母さん…その子たち、何者なの?」

「え?何者って…」

「今日、オレのクラスに来た変な奴と気配がソックリなんだよ」


碧の言葉に紅光がいち早く反応する



「碧、その子って華菜とかいう名前じゃないか?」

「そうだけど…え?何?兄さん知ってるの??」

「その子、何を言っていた?」

「訳わかんないことだよ、自分のこと神様とか言って…まぁ確かに人間じゃなかったな。なんか水操ってたし」

「えっと〜…二人とも、何言ってるのか母さんサッパリだよぅ」



梅流が困ったようにそう言うと二人はバッと立ち上がり、母を庇うように華燐と杢火の前に立った



「お前達も、華菜と同じなのか?」

「目的は何だ!?」

「え!?ちょ、ちょっと二人とも!!」



慌てて二人を宥める梅流だったが、華燐と杢火はただ紅光達を見据えるだけだった
やがて、華燐が悲しそうな声で呟く



「私たちは――ここにいてはいけないんです」

「君たちは、何者なんだ…?」

「貴方達と一緒ですよ。妖怪の血を引く者です」

「なら、この気配はなんだ!?」

「それは、私たちがこの世界の住人じゃないからです。パラレルワールドって知ってる?多分、私たちはそこから来たんだと思う」

「パラレルワールド…」



同じ世界でありながら、異なる世界
存在した未来が存在しないかも知れない世界
その逆も然り――――


不安定だったひとつのピースが、形を成して行くのが解った




「パラレルワールド…華菜と桂も、そこからこの世界に来たというのか」




先程の奇妙な気配――
それは、この世界の正式な住人ではない者が持つ気配だった



「その人たちのことは存じませんが…恐らく、私達のように別の世界から来たと思われます」

「あ、あの…二人とも、怒らないでね?この子たち、本当に行く当てがなくって…」

「――大丈夫だよ、母さん…おかげで、重要なことがひとつ解ったから」

「君たちを、疑ったりしてすまなかった」



小さく頭を下げる紅光を見て、華燐はクス、と笑った





「本当に、どんな時も真面目な方なんですね。“あの人”が言っていた通りに。」







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