「はぁ…っ!はぁ…!!」



本能のままに、梅流が辿り着いた先・・・・

それは、『白狐の森』だった



「梅流っ!」


走りすぎて覚束ない足取りで麓の元に駆け寄る梅流を麓が支える
その頬には涙の跡が幾筋も残っていた

梅流は顔を上げて麓に言った


「く、蔵馬が…!!蔵馬が!」

「梅流、落ち着くんだ。蔵馬なら、きっと大丈夫だから…」

麓はそう言って梅流を落ち着かせるように彼女を優しく抱きしめた
どこか懐かしいあたたかい腕の中
それは、蔵馬とは違うぬくもり…
まるで、父のような、“家族”のぬくもりだった


「助けなきゃ、蔵馬のこと…」


梅流の瞳に強い光が宿る
琉紅はそれを見て、傍らの飛影に言った


「飛影、お願いがあります…!」

「……。」

「…蔵馬の元へ、行って下さい…!!」

「…それは、アイツの望みか」

「蔵馬の望みは、梅流が悲しむ事のない未来です!!」



飛影はその琉紅の言葉を聞くと、静かに溜め息をついた
それから一歩前に出て呟く


「くだらんな…」

「飛影…!」


もう一度雪が降りしきる空を見上げる
紺に近い空と、純白の雪とがよく似合う

梅流の望みは、蔵馬が無事で還って来てくれる事
蔵馬の望みは、梅流が悲しむ事の無い世界

琉紅の望みは、蔵馬と同じ
梅流が笑顔でいることと、2人が幸せでいられること



―――なら、飛影の望むものは?










「…くだらん暇つぶしに、付き合ってやる」










飛影はそう言うと、蔵馬の元へと駆けて行った




“飛影の望み”


それは、恐らく本人すらも気付くことはないだろう





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