街に出たらそこはあまり僕のいた世界と変わらない。
ここは団長の好きな江戸に似てる。
僕の格好は少し目立つのか行き交う人達が皆僕を振り返って見てる。
やっぱり包帯は怪しいかな?
それとも雨も降ってないのに差している傘のせい?
でも両方止める訳にはいかないしなぁ。
僕は夜兎の血が薄いけど太陽は苦手だ。
でも目立つのもあまり好きじゃないし、路地裏に入った。

ああいった視線は好きじゃない。
僕は見世物ではない。


歩いてると何処からか口笛が鳴った
前を見るとむさ苦しい男達が道を塞いる。
「よう兄ちゃん、傘なんて差してどうしたんだ?」

「雨なんて降ってねぇぜ?」

ニヤニヤと下賤な笑いを浮かべる男達を素直に不愉快だと思った。

男は嫌いだ。
汚いしむさ苦しい。
何より綺麗じゃない。


「ファッションだよ。悪いけど、どけて?」
あくまでも冷静沈着が僕のモットー。
細かい事で争うと面倒だから。


「ダメだダメだ、こっからは俺らの領地さ」

「通りたかったら金出しな」


なーんて定番。
いかにもありがちな展開だ。


「生憎だけど今持ち合わせ無いんだよね」

「ならここは通せねぇな」

「待てよ、兄ちゃん随分良さそうな傘だな、その傘でもいいぜ」

男の手が僕の大切な傘に伸びてきた。
瞬間、その手は宙を舞って視界は赤に染まる。
慣れ親しんだ香りがツンと僕の鼻を擽った。


けたたましい叫び声が当たりに響き渡る。


「この野郎ォォオッ!!」

僕が気にせず道を通ろうとすればもう一人の男が殴りかかってきた。


「うるさいんだよ、虫螻が」

一面が赤に染まる、うんなかなか良い景色。

「僕に話しかけていいのは綺麗なお姉さんだけ…って、もう聞こえてないか」


散らばる肉塊を気にせず、僕はまた歩く事にした。



それでも赤は変わらない
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